東急8500系-バリエーション

はじめに

東急8500系は生産期間が大変長かったため、途中でマイナーアップされた箇所が多くバリエーションに飛んだ構成になっています。生産時期によって8000系6次車タイプから8500系21次車タイプまで数多くの種類があります。

このページでは、これら東急8500系のバリエーションが増えた理由と、バリエーション間の違い、そして東急8500系の中でも珍妙なVVVFインバータ制御車についてお話しようと思います。

バリエーション

8500系は息の長ーい車両で1975年に登場してから1991年の最終増備までなんと16年間も製造されていた車両です。その間東急では軽量ステンレスカーの8090/8590系(左図)や制御装置や内外装を一新した9000/1000系(右図)を新たに設計して製造しています。8500系では8500系としながらもこれらの新設計車の改良点を導入していて、同じ8500系でもバラエティーに富んだものとなっています。

東急8500系初期車東急8500系中期車

ではなぜ、新型の車両が開発されたのに古い型である8500系を作り続けたのか?それは次に開発された8090系が地下鉄に必須の貫通扉を持ち合わせていなかったと、そして8500系は半蔵門線直通という使命もあって他の路線の車両と異なりコロコロと新型車を出すことができなかったというのが大きいと思われます。

というのも、運転士はいつも同じ形式の車両に乗務できるとは限らないので、たくさんの形式の電車があると形式毎に操作方法やタイミングなどを磨いていかなければなりません。特に乗り入れ先(この場合は半蔵門線)の運転士は他社の車両の操作を複数覚えなければならないワケでとても負担が大きいからです。

したがって田園都市線では新型の車両が登場しても8500系にその技術を取り入れる形をとり新型車の導入を1992年の2000系導入までしなかったというワケです。8590系は東横線の車両を編成替えして投入したもので2000系導入よりも後の出来事です。

多くの8500系に関する資料では当初のタイプを初期型、8090/8590系仕様のものを中期型、9000/1000系仕様のものを後期型と分類しているようです。ちなみに、8500系が登場したのは1975年でその後8000系グループでは8090系や8590系が登場していますが、最後に新造されたのは8500系だったりします。それどころか、8500系の最終増備は9000系の最終増備と同時なので9000肩を並べることになります(ちっ、あと一日遅ければ9000系よりも新しい車両になったのに。。。(笑))。

※8090/8590系仕様車:外装は8500系のままで8090/8590系の技術を使った軽量ステンレスカー。

※9000/1000系仕様車:内装が9000/1000系に準拠したもので制御装置は従来仕様と同じ。

なお、8090/8590系仕様の軽量ステンレスカーは初期編成にも中間車両として組み込まれており、31編成以降は先頭車両から最後尾まで編成単位で軽量ステンレスカーです。37編成以降は編成単位で9000/1000系仕様の内装を採用しています。

東急8500系初期車東急8500系中期車東急8500系後期車

まぁ、一般人は見てもわからないとは思いますが、左から順に初期型、中期型、後期型と並んでいます。私は初期型は屋根のカーブで、後期型はクーラーの室外機の形状で区別しています。

VVVFインバータ制御車

いろいろなバリエーションのある8500系ですが、特筆すべき点は8642F編成に組み込まれたVVVFインバータ車です。VVVFインバータ試作車と呼ばれているのでVVVFインバータの試作車のように思いきや、これが製造されたのは改造車が1989年、新造車に至っては1991年製造で、9000が1986年から製造されていることを考えれば東急はすでにVVVFインバータ車を量産しているのです。ちなみに6000系が本当のVVVFインバータ試作車として改造されています。では、この改造はなにを試したのか?

東急は腐食に強いステンレス車体の利点を活かして車体を40年~50年使う計画で、実際に1986年頃から7000系や7200系の老朽化した電気品周りを更新して延命する工事を行っていました。8500系もVVVFインバータに更新する計画があったようで、その検証と田園都市線でのVVVFインバータの試験が目的だったようです。

ただ、どうも改造が思ったより割高なので改造して延命するより新車を投入した方がオトクという結論に至ったらしく、8000系グループでその後VVVFインバータに更新された車両はありません。

また、試作車が新造された翌年(1992年)に2000系が登場しているので、8500系のVVVFインバータ仕様車でも登場させる目論見もひょっとしたらあったのかもしれませんが、すでにある8500系をVVVFインバータにしないのであれば8500系のVVVFインバータ仕様車を中途半端に数編成増備するメリットはありません。結局、VVVFインバータ搭載の9000系をベースにした2000系が導入されて今に至っています。

※VVVFインバータについて詳しくは『制御方式』を参照してくさい。

※8642Fについて詳しくは『8642F』を参照してくさい。