FinePix Z800EXRの撮影モード

はじめに

私が愛用しているFinePix Z800EXRについて、その特徴を『デザイン』、『絵づくり』、『タッチ操作』、『イメージセンサ』に分けてお話ししましたが、今回はFinePix Z800EXRに搭載された撮影モードや各種設定について色々と撮り比べて比較してみようと思います。

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はじめに

FinePix Z シリーズには、撮影モードで『EXRオート』や『シーンポジション』、『タッチショット』などを選択します。

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撮影モードのトップ画面

まず、各項目が2~3ステップ程度必要な場合がほとんどで切り替えがメンドウです。また、切り替えもやや時間がかかりシャッターチャンスを逃すことにしばしばです。結果的に私はめんどくさくて、つい『EXR AUTO』のまま固定にしていることが多いです。

せっかく、多彩な撮影モードを持っているのですからワンタッチで呼び出せるようにして使ってみようと思うようにしないと宝の持ち腐れになってしまいます。必要性の低い撮影モードを省くなりして1ページにまとめるか、よく使う撮影モードをお気に入りとして登録(ファンクションボタンなど)できるようにするなど工夫する必要があると思います。

もう一つ、FinePix Z800EXR、は名前からわかるようにスーパーCCDハニカムEXR の『EXR』の機能が特徴なハズなのですが、撮影モードで『EXR』が使えるのは『EXR AUTO』(の項目内)のみで、後は全て通常の撮影モードになってしまいます。

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なんといってもEXRが重要なポイント

それもあって、『シーンポジション』や『タッチショット』などはほとんど使うことがありません。他の撮影モードでも『EXR』の特性を生かした撮影ができるようになればと思います。なお、後継機種ではタッチショットも『EXR』に対応するなど改善は進められているようです。

余談ですが、FinePix Z800EXR には『EXR AUTO』と普通の『AUTO』がそれぞれ搭載されています。EXRがウリのFinePix Z800EXR でわざわざ『EXRじゃないAUTO』が搭載されているのは大いなる謎です。

『EXR AUTO』

『EXR AUTO』を選択すると『EXR AUTO』か『HR』、『DR』、『SN』の選択画面に移動します。ところが、移動前に毎回ご丁寧に『EXR AUTO』の解説ページが4秒程度表示された後に選択画面に移ります(起動画面と同じで処理待ちをごまかすため?)。買った直後やデモならば良いでしょうが、もう買って1年以上経つのに毎回でてくるのはちょっと。。。

『EXR AUTO』は『HR』、『DR』、『SN』を自動的に判断して切り替えるものですが、ここで手動で決めることもできます。なお、選択してからOKボタンを押さないと確定しない仕様で、急いでいるときは結構わずらわしいと感じます。

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EXR AUTOを選択した直後に左の画面が表示され、しばらくして右の画面になって選択する

『EXR AUTO』を選択するとカメラがシーンに応じて『HR』、『DR』、『SN』を自動的に判断して切り替えます。また、シャッターを半押ししてフォーカスをロック(AFロック)するとどの撮影モードが選択されたか画面に表示されます。私が使っている限りでは、ほとんど正しく判断されているように思えます。

なお、『HR』、『DR』、『SN』と合わせてマクロや風景などのシーンも認識してそれに合わせた調整を行っているようです。マクロ撮影なども『EXR AUTO』で、しっかり行えます。

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マクロモードで撮影

また、『EXR AUTO』にするとホワイトバランス、ISO、露出補正などかなりの機能が設定できなくなります。不思議なのは、HR、DR、SN のそれぞれ単体では設定できていた項目が『EXR AUTO』にすると設定できなくなるのです。

  露出 ISO ホワイトバランス フイルムシュミレーション ダイナミックレンジ AFモード
HR △(一部) ×
DR △(一部)
SN ×
EXR AUTO × × × △(一部) × ×

露出、ホワイトバランス、AFモードは、各モード個別では設定できるにも関わらず、EXR AUTOでは設定不可/AUTO固定になります。また、フイルムシュミレーションは『Velvia/ビビット』が選択できなくなり、事実上カラー写真は『PROVIA/スタンダード』一択になってしまいます。

もちろん、撮影者がいろいろ設定をしなくても全部オートで最適な設定としてくれるということなのでしょうが、『オートでできる』のと『オートしかできない』は違います。ましてや、撮影モードが素早く切り替えられない以上は『EXR AUTO』が最もオールラウンドプレーヤーになることが予想されます。

FinePix Z800EXR(トップ)の画質のところで露出を調整する必要がある場合や高いISOによって写真の質に影響がでていることをお話ししました。そういうことを考えると、露出補正やISOの設定を撮影者がある程度調整できるようにするか、各撮影モードを素早く切り替えられるようにする必要があると思います。ファンクションボタンなどでユーザーがよく使う撮影モードを一発で呼び出せるようにできたらいいですね。

『HR』、『DR』、『SN』の違い

FinePix Z800EXR にはEXRで 『HR』、『DR』、『SN』の三つのモードがありますが、その違いについて比較してみました。下の写真は同じ場所の写真をそれぞれのモードで撮ったものです。なお、『EXR AUTO』では『DR』が選択されました。また、オマケで『シーンポジションの雪』も入れています。

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(左)『HR』、(右)『DR』
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(左)『SN』、(右)『シーンポジションの雪』

※写真をクリックすると拡大できます。

『シーンポジションの雪』のみ色味が補正されて他の写真に比べて青っぽくなっています。実際の景色も曇りでやや青っぽかったですが、ちょっとやり過ぎの気がします(ちょうど両方の間くらい?)。雪モードはもっと雪が画面の多くを占めている場合に使うモードなのかもしれません。

オートで『DR』が選ばれただけあって、『DR』は『HR』や『SN』でつぶれて見えなくなっている林の暗い部分などが見えるようになるなど明確な違いが感じられますが、逆に『HR』と『SN』の差はあまり感じられません。

『SN』はノイズを押さえる効果が謳われていますが、いつでもというわけではなく夜間など光量が少なくノイズが発生しやすい場合に威力を発揮するものと考えた方が良さそうです。

もうひとつ別の場所の写真も載せておきます。こちらは、『EXR AUTO』で『HR』が選択されました。

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(左)『HR』、(右)『DR』
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(左)『SN』、(右)『シーンポジションの雪』

※写真をクリックすると拡大できます。

今回も『SN』と『HR』の違いは感じられませんでしたが、『DR』はやや林の暗い部分で違いがあるように思えます。ただ、先ほどよりも差は少なく、『DR』も『SN』と同様にダイナミックレンジが不足している場合にのみ威力を発揮するもので、そうでないときは特に効果はないと考えて良いと思います。

また、『シーンポジションの雪』も今回は他の写真に比べて色味に違いはないので、先ほどは『雪モード』にしたにも関わらず、半分以上が白い雪とは正反対の黒っぽい木々だったため正しく補正できなかったのかもしれません。

このことから、撮り手としては面白みに欠けますが『EXR AUTO』が判断したモードで撮るのが適切と言って良いのかもしれません。

なお、白い雪の部分が多いとアンダー露出になりがちなので、ややプラス補正すると綺麗な雪の写真が撮れます。なので、シーンモードではなく『EXR』のモードを使いたい場合は、露出だけでも補正すると良いカモしれません。

シーンポジション

シーンポジションは比較的たくさんあるのですが、他の撮影モードと同様に切り替えが面倒なので夜景モード以外はあまり使っていません。

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15通りのシーンポジション、シーンポジション自体は1ページに纏まっている

シーンポジションでオススメなのは夜景モードで、オートが基本のこのカメラで長時間露光による夜景撮影が可能なので便利です(手動でバルブなどはできないので)。また、夕焼けモードなども手軽に上手く撮れるので使いこなせば写真の幅が広がるとかもしれません。

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夜景モード
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(左)『EXR AUTO(DR)』、(右)『夕焼けモード』

ただし、シーンモードは『EXR』の機能を使っていないので、『SN』が最適だろう夜景や『DR』が向いているだろう夕日などでも全画素を普通に使う(HR相当?)モードになってしまっているのは残念なところです。

以降の機種では、この問題の一つの解として、EXRオートの認識シーンの数を増やして、どちらかというとシーンを手動で切り替えることのない使い方をする方向に進んでいるようです。

ぐるっとパノラマ360

これはカメラを撮りながら『ぐるっと』とまわることでパノラマ写真がとれるというとても面白い機能です。撮影範囲は120°、240°、360°から選べます。

どう考えても遊び機能なハズなのですが、実は『EXR AUTO』についで多く利用している撮影モードと言っても過言ではありません。旅行先などで360°素晴らしい景色に囲まれるなどということは良くあること。今までその一部を切り取って撮って帰ったわけですが、これによって丸ごと余すことなく撮って帰ることができるのです。

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ぐるっとパノラマの120°
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ぐるっとパノラマの360° 左端に右のお城の右端が写っている

ぐるっとパノラマ自体はFinePix Z700EXR から搭載されていますが、360°まで広がったのはFinePix Z800EXR 世代からなので、ちょっとしたアドバンテージです。

私が他に使っているLUMIX G1やPentax Q にも搭載されていない独自機能で、かなりのお気に入りです。おもしろいイロモノ機能の多くは最初だけ使ってもすぐ飽きるものが多いのですが、これは今でもちょくちょく使っています。もちろん、ところどころつなぎ目と思われる場所におやっと思うところもあったりもしますが、それでも良くできていると思います。

シャッタースピード・絞りなど

FinePix Z800EXR は基本的にオートで撮る人向けの位置づけのようで、上位のFinePix F300EXRのようにシャッタースピード優先や絞り優先のような、ユーザーがあれこれ考えて設定するような撮影モードはありません。

ですが、同じ被写体でも撮影者の意図によってこのあたりの設定は変わってくるので、細かく設定する必要はなくてもある程度選べるようになっている方がありがたいです。

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(左)シャッタースピードを遅めにして『流れ』を強調、(右)シャッタースピードを速くして『瞬間』を強調 (LUMIX G1)
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絞りを開放にしてボカシを強調 (フイルム)

せめて、シャッタースピード『速い』・『ふつう』・『遅い』と、しぼりを『開放』、『ふつう』、『絞る』などの簡単な選択モードがあると、ユーザーもより写真作りを楽しめますし、上位機種へのステップアップにもつながると思います。

D-rang

FinePix Z800EXR には『Dレンジ』という項目があり、ダイナミックレンジの幅を調整することができます。400%の方がダイナミックレンジが広がりますが、トレードオフとしてノイズも増えるとあります。そこで実際に撮り比べてみました。右は写真のヒストグラムです。

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Drang 100%
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Drang 200%
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Drang 400%

※写真をクリックすると拡大できます。

拡大してみると林の暗がりや雪の影などでDレンジ100%では見えなくなっている部分が、Dレンジ200%で見えるようになっているのがわかります。ただ、Dレンジ200%とDレンジ400%の違いはそれほど感じられませんでした。

ヒストグラムを見るとさらに明確な違いがあり、Dレンジ100%の時は上に振り切れている部分がDレンジ200%ではきちんと範囲に収まっているのがわかります。このヒストグラムからDレンジ200%でだいたい収まっているのでDレンジ400%にしても違いが感じられない理由も説明がつきます。

つまり、当たり前の話ではありますが、このDレンジの設定は撮影範囲(被写体)にオーバーかアンダーで範囲外となっている部分がある場合に威力を発揮するもので、その効果は間違いなくあるものの、範囲内に収まっているような写真ならば意味はないというわけです。

逆にノイズに関しては、私の見る限りそれほど気になるように増加してはいないように思います。なので、Dレンジは400%に設定しておいても問題無いと思います。

ISO

FinePix シリーズは以前から高感度による手ぶれ防止をウリの一つとしていました。今でこそ高感度なんて当たり前になっていますが、FinePix シリーズはその走りでした。FinePix Z800EXRはISOが最大3200までで、フラグシップのFinePix F300EXR の最大ISO 12800と比べると低めではありますが充分だと思います。

感度を引き上げるとノイズが多くなるのはフィルム時代と同様なのでトレードオフを考える必要もあります。そこで実際に撮り比べてみました。すべてノイズが少ないEXR の『SN』モードでの撮影です。

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(左)ISO 100、(中)ISO 400、(右)ISO 1600

※写真をクリックすると拡大できます。

等倍にしてパット見ただけでも、ISO 100だと暗くやや手ぶれしているのがわかります。またISO 1600だとややザラザラとしているのもわかると思います。FinePix Z800EXR はオートでも結構気軽にISO 1600まで上げてくれますが、正直ISO 1600以上はあるとありがたいもののできれば避けたい感度だと私は思います。

FinePix Z シリーズのレビューで、『ノイズが目立つ』や『ザラザラとした』というようなコメントを見かけることがありますが、それはこの感度による問題なんじゃないかと思います。もちろん、オートでなる以上はその機種の弱点には違いないのですが、風景などの場合は手動でISO 400程度に抑えるようにすることでより良い画質が得られるのではないかと思います。