FinePix Z800EXR

はじめに

FinePix Z800EXR について、すでに後継機種も登場したというのに無駄に纏めてみました。同じ機種や似た傾向のあるFinePix Z シリーズを検討している方、はたまたFinePix Z シリーズの開発者の方(ゼヒ)、の参考になれば幸いです。

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FinePixZ800EXR(ゴールド)

私は、1998年に『FinePix 700』という富士フイルムのデジカメを使ってみて以来、ずっと富士フイルムの製品のファンです。なのでこれは、これからも富士フイルムには良い製品を作っていって欲しいなぁと願ってやまない一人の写真好きのレビューです。

FinePix Z800EXRとは

FinePix Zシリーズは薄くスタイリッシュな富士フイルムの準フラグシップとなるモデルです。光をプリズムで90°曲げてレンズを縦に収納する屈曲式を採用し、起動してもレンズが飛び出さないのが特徴です。

FinePix Z800EXRは、FinePix Z700EXR の後継でイメージセンサに後述の位相差AFを搭載したスーパーCCDハニカムを採用しているのがポイントです。

http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0415.html (富士フイルム)
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/20100804_385252.html (デジカメWatch)

詳しくは、メーカーや他のレビューに書いてあると思うので割愛しますが、特徴は以下の部分でしょうか。

  • 起動してもレンズが飛び出さないスタイリッシュなデザイン
  • フィルムメーカーならではの自然な絵づくり
  • 裏面一杯の大きな液晶画面とタッチパネルによる操作
  • イメージセンサに同社独自の位相差AF搭載のスーパーCCDハニカムを採用

デザイン

FinePix Z800EXR のデザインは、なんと言ってもZ シリーズの特徴でもある起動時にレンズが伸びてこないのがポイントです。ジーンズのポケットにも無理なく入る薄さもうれしいところ。

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(左)レンズカバーが電源ボタン、(右)小型のPentax Qと比較してもずっと薄い

起動時にレンズが出てこないのは光を90°曲げてレンズを縦に収納する屈曲式を採用しているためで、この方式は薄くスタイリッシュにできる反面、光学的な画質で不利になると言われています。

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(左)一般的な沈胴式、(右)屈曲式

※FinePix Z800EXRのデザインについて詳しくはFinePix Z800EXR のデザインをご覧下さい。

絵づくり

実際に使っている感覚だと他のデジカメにくらべてコントラストが抑えめで自然な色合いだと思います。このあたりはさすがフイルムメーカーの絵づくりではないでしょうか。

特に独自のイメージセンサによる撮影モードの、高ダイナミックレンジの『DR』モード高感度の『SN』モードは屋内・屋外を問わず手軽に綺麗な写真がとれるのに効果的だと実感します。

『DR』モード(ダイナミックレンジ優先)

『DR』は屋外なら空が、屋内なら窓があるようなシチュエーションで威力を発揮していて、たしかに白つぶれや黒つぶれを押さえて綺麗な写真が撮れていると感じます。

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『SN』モード(感度優先)

『SN』は暗い場所での撮影で使うモードで、ノイズが増えるものの夜間でも三脚を使わずに写真が撮れるので旅行中にとても役立ちます。もともと、 FinePix シリーズは高感度路線のはしりで、FinePix Z800EXR も健在と言えます。

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撮影モードによらず見たままの自然な写真になる傾向ですが、やや地味と感じてしまうかもしれません。この辺りは好みだと思います。

多数のシーン別のモードもありますが、上記2つのモードに加えて高画素数の『HR』モードを加えた3つの中から最適なモードをカメラが自動的に選択する『EXR AUTO』を使うことを主眼に設計されているように感じます。

※FinePix Z800EXRの絵づくりについて詳しくはFinePix Z800EXR の絵づくりをご覧下さい。

※撮影モードの写真比較についてはFinePix Z800EXR の撮影モードをご覧下さい。

操作

FinePix Z800EXRは基本的な操作をほとんどタッチパネルを使って行うので、物理的なボタン類はほとんどシャッターとズーム及び再生ボタンの3つだけ(あと電源スイッチ代わりのカバー)と至ってシンプルです。

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(左)背面はタッチパネルのみ、(右)メニューの多くはタッチ操作

タッチパネルの方式は感圧式で、携帯電話などで主流の静電容量式ではないので、やや強めにタッチする必要がありますが、手のコンディションに関わらず確実に反応し、手袋などをはめたままでも使えるという利点があります。

FinePix Zシリーズはタッチパネル搭載カメラのはしりで古くから採用しているのですが、メニューの構造がボタン時代のままでタッチパネルを生かせてない部分も少なからず見受けられたので今後に期待したいところです。

※FinePix Z800EXRのタッチ操作について詳しくはFinePix Z800EXR のタッチ操作をご覧下さい。

イメージセンサ

FinePix Z800EXRはイメージセンサに富士フイルム独自のスーパーCCDハニカムEXRを採用し、さらにイメージセンサ内蔵のAFセンサによる位相差AFを搭載しているのが特徴です。また、サイズは1/2.0型でフラグシップモデルのFシリーズと同等です。

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なお、後継のFinePix Z900からイメージセンサが裏面照射型のCMOSに変更されてしまったので、奇しくもこのFinePix Z800EXRはFinePix 4700Zから続いていたスーパーCCDハニカムの最後の世代となってしまいました。

スーパーCCDハニカムEXR

スーパーCCDハニカムEXRの特徴は、イメージセンサーの画素を上手く使って、ダイナミックレンジ重視の『DR』モードと高感度重視の『SN』モード、それに画素数重視の『HR』モードの3モードをシーンに応じて切り替えて、それぞれのシーンで高画質な写真を撮ることを可能にしている点です。

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(左)ダイナミックレンジ重視『DR』モード、(右)高感度重視『SN』モード

なお、イメージセンサの画素数は1200万画素ですが『DR』モードや『SR』モードではダイナミックレンジや感度をあげるのに画素を使うので撮影された写真の画素数は800万画素程度になります。

位相差AF

FinePix Z800EXRは、オートフォーカス方式に世界初というイメージセンサ内蔵のAFセンサによる位相差AFを搭載している点が大きな特徴です。

位相差AFとは一眼レフカメラ(レフがある=ミラーレスではない)で利用されている方式で、高速なフォーカスが可能ですが、AFセンサに光をあてる機構のため一眼レフのような大きなカメラになってしまう傾向がありました。

FinePix Z800EXRではAF用のセンサをイメージセンサの中に組み込むことでコンパクトデジカメながら位相差AFを実現しました。かなり画期的なことで、本来FinePix Z800EXRの最大の特徴なハズなのですが、次のFinePix Z900EXRから使われなくなってしまったので、効果のほどが微妙だったのかもしれません。

イメージセンサーについて詳しくはFinePix Z800EXRのイメージセンサをご覧下さい。

その他

起動時間

けっこう各所で言われていて、現行機種でも同様の傾向があるようなのですが、はっきり言って相当遅いです。たぶん、FinePix Z2よりも遅くなったと思います。手元の時計で計ったところ4~5秒くらいかかっていました。

充電器

FinePix Z800EXRの充電器は、プラグ部分が折りたためるコンパクトなタイプで旅行などに持って行くのにかさばらなくて便利です。プラグが固定のものやケーブルがついたものも少なくないので、細かい気配りが評価できます。

なお、後継のFinePix Z900EXR では充電器がイマイチになったと口コミで書かれていたので注意が必要かもしれません。

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(左)ジックリ眺められる起動画面、(右)プラグが折りたためる充電器

ぐるっとパノラマ

FinePix Z800EXRには、カメラを撮りながら『ぐるっと』とまわることでパノラマ写真がとれる『ぐるっとパノラマ』というとても面白い機能が搭載されています。遊び機能なハズなのですが、旅行などの風景写真を撮るときにとても重宝する素晴らしい機能です。

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ぐるっとパノラマの120°
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ぐるっとパノラマの360° 左端に右のお城の右端が写っている

タテヨコ判別機能

FinePix Z800EXR は縦横の向きを判別するセンサーが搭載されていて、写真もそれに合わせて記録されます。ですから、縦にして撮った写真はパソコンのビューワーで見ても最初から縦表示になっています。

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これ地味ですが、手動で一枚一枚回転させるのはかなりメンドウなので、すごく便利な機能だと思います。

最新の『Pentax Q』も搭載していないので、最近のカメラなら当たり前という機能ではありません。

その他について詳しくはFinePix Z800EXRのあれこれをご覧下さい。

まとめ

FinePix Z800EXRは、フィルムメーカーならではの自然な色合いの写真をスタイリッシュに楽しむユーザー向けのカメラだと思います。

イメージセンサから絵づくりまでフラグシップモデルに匹敵する性能を、スマートなボディに納めているという意味で、単にデザイン重視の薄型とは一線を画する機種と言えます。

ただし、ユーザーが色々と調整して写真作りを楽しむという使い方ではなく、あくまでオートでサクっと撮ることに主眼を置いているので、旅行やイベントなどを綺麗に残したいというニーズにこそ合っている機種だと思います。