最適な解像度は?

はじめに

では、フィルムスキャンで最適な解像度はどの程度なのでしょうか。まぁ、解像度は高いに越したことはないのですが、スキャンの時間も掛かりますし、出来上がった写真データも大きくなってしまいます。ようするにバランスが大切ということになるわけですね。

最適な解像度は?

デジカメの画素数で考える

まずデジカメの分野から考えてみましょう。2012年現在のフルサイズ(36mmフィルムと同じサイズ)のイメージセンサーを搭載したフラグシップモデルの画素数は2500万画素程度のようです。

ただ、年々ジワジワと向上しているのでこれで充分というわけではないのかもしれません。

余談ですが、フィルムはそれ自身がイメージセンサーのようなものですから、『フルサイズ』のイメージセンサー相当となり、EOS Kissのようなコンシューマ向けの一眼レフも含めて一般的なデジカメと比較すると光学的に有利であると言えます。

フィルムの性能で考える

もとのフィルムに写っているものを余すことなく、と考えるとフィルムの特性が重要になってきます。フィルムは感度によって粒子の大きさが異なるので解像度が変わってくるのですが一般にISO100であれば3500~4000dpi程度、あとはISOがN倍になったらNの平方根で割るとだいたいの値が求まるらしいです。つまりISO400ならば4倍 = ルート4 = 2なので上記を2で割れば1750~2000dpi、ISO1600ならば16倍 = ルート16 = 4なので875~1000dpiということになります。

もちろん、元の写真がピンぼけではせっかくの解像度も台無しなので、撮影状況が最適な状況で撮影された写真でもその程度の解像度があればほぼ余すことなくスキャンできるということです。

使用用途で考える

印刷用途ならば大きな紙に印刷することもあるでしょうから解像度は高い方がいいでしょう。逆に、ディスプレイに表示するだけで印刷はしないのであればずっと低い解像度でも大丈夫ということになります。

例えば、リビングに設置されたフルハイビジョンのテレビ。これは1920×1080ドットなので207万画素、仮に将来を見越してハイビジョンを上回る「4k」に対応させるつもりでも、800万画素程度あればことたりることがわかります。

スキャナの設定範囲

Canon Canoscan 9000Fの附属のスキャンドライバでは、~1200dpi、1600dpi、2400dpi、3200dpi、4800dpi、6400dpi、 9600dpiが項目で選べますが、手動で数字を打ち込むことでこの範囲内であれば任意の解像度でスキャン可能なようです。

そのうち1200dpi、2400dpi、3200dpi、4800dpi、6400dpi で実際にスキャンしてみたところの画素数と解像度の対応表です。

画素数(dpi) 画素数 <約>
1200dpi 200万画素
2400dpi 800万画素
3200dpi 1400万画素
4800dpi 3000万画素
6400dpi 5500万画素

9600dpiはエラーがでてしまったのでスキャンできませんでした。エラー内容をみると、どうも附属のアプリケーション自体の制限のような感じです。純正ソフトで使えないモードなんて。。。まぁそのためのPhotoshop Elementsなのかもしれませんね。

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この対応表を見ると、携帯やテレビ向けならば1200dpi程度でも事足りることがわかります。2400dpiもあれば今のコンパクトカメラに匹敵し、 3200dpiで一眼レフのデジカメのレベル、4800dpiまでくればフィルムの情報をほぼもれなくスキャンできるということになります。

スキャン画像で比較

まずはともあれやってみて比較してみることにします。比較したのはISO100 のフィルム(Fujifilm REALA)で撮影された写真を1200dpi、2400dpi、3200dpi、4800dpi、6400dpi の5つの解像度でスキャンしたものです。

オリジナルのビットマップだとデータ量がハンパないことになるので、未圧縮(ビットマップ)でスキャン後にPhotoshopで高画質(10)のjpegで保存しています。(画像をクリックすると原寸大に表示されます。)

写真(全体)

まずはスキャンした写真の全体を見てみます。パソコンのディスプレイに表示するならば1200dpiでも充分ですから、縮小表示のままでは違いは感じられないと思います。(クリックして原寸大で見比べてみて下さい。)

(左)1200dpi(約200万画素)、(右)1600dpi (約350万画素)

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(左)2400dpi(約800万画素)、(右)3200dpi(約1300万画素)

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(左)4800dpi(約3000万画素)、(右)6400dpi(約5500万画素)

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写真(拡大)

続いて、一部を切り出して拡大した画像です。だいたい同じ場所を切り取って同じサイズまでニアレストネイバー法(補完しない原始的な手法)で拡大して同じサイズにしました。

(左)1200dpi、(右)1600dpi

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(左)2400dpi、(右)3200dpi

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(左)4800dpi、(右)6400dpi

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見比べてみると、たしかに1200dpiから解像度が上がるごとに画質が向上していることがわかります。ただ、3200dpiくらいからあまり差は感じられなくなるのも事実で、6400dpiはなんとなくぼけたようにも見えます。

ということで、フィルムの性能のところでお話しした3500dpi~4000dpi程度というのが実際のスキャン画像からも裏付けられたと言えると思います。