α7 S with CarlZeiss Biogon 35mm F2.8 [Before World War II Model]

はじめに

Biogon 35mm F2.8はカールツァイスの広角レンズで、少しマニアックですが写りに定評がありファンも多いレンズです。私はロシアで買ったBiogonのコピーレンズJupiter-12 35mm F2.8 の写りがとても気に入っていて、ぜひとも本家のBiogon 35mm F2.8を使ってみたくなり購入しました。お値段は4万円程度です。

写りについては、Jupiter-12と似たような写りを予想していましたが、正直本家の実力を思い知らされました。まず、発色がJupiter-12とはまったく違う深く鮮やかな色なのです。解像感も高く繊細で完成度の高いレンズながら、周辺光落ちや流れなどちゃんとアジも残っていて、実用的でなおオールドレンズの雰囲気も楽しめる銘レンズだと思います。

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CarlZeiss Biogon 35mm F2.8

Biogon 35mm F2.8はカールツァイスの名設計者ルートヴィッヒ・ベルテレ氏が1934年に設計したBiogonと呼ばれる最初のレンズで、Sonnarを広角向けに発展させたものです。なお、Biogonはその後レンズ構成が変更になり、そちらの構成をビオゴン型と呼ぶため、この最初のBiogonはビオゴン型ではなくゾナー型に分類されるようです。(戦後タイプはこちら)

なお、カールツァイスの広角レンズはBiogonの他にDistagonも有名です。Biogonは構造上フランジバックを短くする必要があり、ミラー機構がある一眼レフには使えなかったため開発されたのがDistagonです。Biogon(ビオゴン型)は対象型で歪曲収差が少ないのが特長で、一方Distagonはレトロフォーカス型で周辺光落ちが少ないのが特長です。

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このレンズは見た目が特徴的で、うしろに思いっきりレンズが飛び出しています。マウントアダプタを付けても右下の写真のようにマウント面からレンズが飛び出すので、α7シリーズは大丈夫ですがミラーレスカメラでも機種によっては内部に干渉する場合があるようです。また、取り外したレンズの置き方に注意しないとレンズを傷つけてしまいます。

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Biogonも製造時期によりいくつかのバージョンがあります。購入したレンズはT*コーティングされてない戦前のタイプで後玉が大きいのが特長です。ちなみに、純正のコンタックスでも戦後のコンタックスIIa/IIIaは内部が干渉するので、戦前のBiogonは取付けられないそうです。

このレンズはCONTAX C(オールドコンタクス)マウントの外爪タイプで、KIPON社製の外爪専用アダプタのCRF-NEX(8000円程度)を使用しました。同じCONTAX Cマウントでも外爪タイプはレンズにピントリングがあるのでアダプタの構造は非常にシンプルになります。ただ、マイナーなためか種類が少なく割高なような気がします。

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Biogonは後玉が大きく飛び出していてマウントアダプターを付けてもレンズが後にはみ出すので、そのままではリアキャップをつけられません。とはいえ、毎回アダプタを外して専用リアキャップにしまうのは面倒です。Biogon向けの深いEマウントレンズのリアキャップなどは、(当たり前ですが)探してもなさそうなので作ることしました。

やることは簡単でリアキャップを2個用意して、片方の底をくりぬいてから重ねて接着剤でくっつければ深いリアキャップの完成です。もしBiogonで似たようなお悩みをお持ちの方はお試し下さい。他のマウントや後玉が飛び出す別のレンズでも応用できると思います。やる際はカッターでケガをしないように充分注意してくださいね。

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こんな感じになります。地味ですが、これで外でのレンズ交換が劇的に楽になりました。

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写りの印象

まず、開放から深く鮮やかな色合いで、コーティングのないレンズとは思えない写真に感動しました。それでいて、高コントラストな最新のレンズとはまた違う、無理のない自然な色だと思います。開放でも中央部はかなりシャープですが、絞るとさらに解像感が増して繊細な写真になります。

ただし、周辺部は盛大に流れて、絞っても改善するものの無くならないのはご愛敬。フイルムは斜めの光でも問題なく感光するのに対してイメージセンサは光の入射角がシビアなのが原因のようで、レンズとイメージセンサとの相性と言えるかもしれません。同様に周辺光落ちも健在なので古い写真のようにアジのある仕上がりになります。

戦前型のこのレンズはコーティングがないのですが、奥まったところにレンズがあるおかげか、昼間はそれほど光の方向を意識しなくてもキレイに撮れます。ただ、夜景などで強めの光源があるとガッツリとゴーストが発生するのは悩ましいところ。

風景写真が好きなので35mmという広角レンズは手軽に使えるちょうど良い画角です。色味が素晴らしく高い解像感、それでいてオールドレンズらしい雰囲気も味わえるので大変気に入っています。後玉が飛び出していて少し扱いずらいですが、コンパクトなので旅行鞄に一本しのばせて行きたくなるレンズだと思います。

α7S + Biogon 35mm F2.8 ISO100 F4 1/1000 Vivid

作例

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