各部の名称と役割

はじめに

このページではマザーボード上のパーツやコネクタ等の名前と役割についてお話します。

図

名称と役割

1.CPUソケット

CPUのコネクタにはスロットタイプもありましたが、現在ではソケットタイプが一般的です。対応するCPUによって形状や大きさが多少異なりますが位置はだいたいこのあたりにあります。

2.メモリスロット

メモリスロットの形状は対応するメモリによって異なりますが、だいたいこの位置にあるのが一般的です。SIMMメモリのスロットの色は習慣的に白が多かったので、DIMMメモリではそれと区別する意味で黒色が多く用いましたが、最近ではデュアルチャンネルの対となるメモリが分りやすいようにチャンネルごとに色分けしている製品が多くなりました。

3.拡張スロット

PCI Express や PCI のスロットが並びます。以前はPC/ATの標準バスであったISAバスや、AGPなどがありましたが現在では見かけることは少なくなりました。

また、コネクタの色がISAバスは黒でPCIスロットでは白のように、慣例的に色が統一されていましたが現在ではメーカーによって自由に色を選択しているようです。

4.SATAポート

Serial ATAポートで、4~8個程度実装していることが多いです。位置は他のコネクタ以上に自由が利くのでまったく異なる位置に配置されている場合もありますが、HDDの位置を考慮すると右下あたりにあることが多いです。チップセット標準のSerial ATAポートの他、マザーボードによっては別途コントローラをオンボードで搭載してSerial ATAポートを追加しているものもあります。

以前は赤いコネクタが多かったですが、Serial ATA 3.0 (6Gbps) 対応のポートを黒にしたり、別のコントローラーからのポートを別の色にしたりと、結構カラフルなものも増えてきました。

5.インターフェース

ATXマザーボードはこの位置にUSBポートなどのある背面パネルが配置されています。この位置が決められているおかげで、マザーボードをケースに取り付けただけでこれらのポート類が使えるようになりました(それまでは、ケーブルでケース側にあるコネクタと接続していました)。

PC99規格(MicrosoftやIntelが定めた98年のパソコンはこうあるべきだ!という規格)によってキーボードやマウス、Sシリアルポートやパラレルポートなどは配色が決まっていたのでカラフルで分りやすかったのですが、最近ではこれらのポート自体が減ってしまい、新しい規格のものは色までは統一されていないようです。

6.ノースブリッジ
7.サウスブリッジ

ともにチップセットの1つで、本来ノースブリッジがCPUバスとメモリバスのブリッジで、サウスブリッジがPCIバスとISAバスのブリッジという位置づけでしたが、現在では高速な機器とやり取りするのがノースブリッジで比較的低速な機器とやり取りするのがサウスブリッジという位置づけとなっています。マザーボードを地図に見立てると、ノースブリッジが北に、サウスブリッジが南にあるのでそう呼ばれています。

ノースブリッジはCPUとメモリ及びグラフィックカード用のPCI-Express(又はオンボードグラフィック)、チップセット間のバス(従来ならPCI)となどを司ります。ノースブリッジは高速に稼動するので最近では発熱も問題となってきていて、ヒートシンクもしくは小型のファンが装備されることもあるようです。

ノーズブリッジに接続される機器は高速な信号のやり取りが必要となるのでタイミングがシビアになります。よってノースブリッジの位置はCPUやメモリとの距離が近い場所に配置されます。またCPUやメモリは配線が多いので、同じ方向にCPUとメモリが配置されると配線が困難になってしまうので、違う方に配置されるので上の図のような構成になります。

サウスブリッジは、周辺機器用のPCI ExpressコントローラーとSATAコントローラ、USBコントローラなどを搭載しています。これらの機器はノースブリッジに接続される機器よりも低速で配線の数も少ないので位置は比較的に自由です。

最近ではCPUが多機能化して、メモリコントローラーやオンボードグラフィックなどのノースブリッジが搭載していた機能を統合してしまったので、ノースブリッジを廃した1チップ構成なりつつあります。

8.LAN

現在のサウスブリッジにはLANの機能の一部(ネットワークコントローラー)が内蔵されていて、物理層となるチップを搭載することでLAN機能を実現できます。

ただし、ネットワークコントローラーも搭載した通常のLANチップでも安価なため、サウスブリッジの機能は利用せずに通常のLANチップを搭載していることも少なくありません。

9.サウンドコーディック

現在のサウスブリッジにはサウンド機能の一部(サウンドコントローラー)が内蔵されていて、コーディックを搭載することでオンボードサウンド機能を実現できます。サウンドのアナログ部分はノイズに弱いのでオーディオコネクタの近くに配置されていることが多いです。

10.BIOS ROM

BIOSはソフトウェア的に書き換え可能となっていますが、書き変えに失敗すると最悪起動不能になるのでバックアップ用に2つ搭載したり、保護領域に復旧するのに必要な必要な最低限の機能が納められていたり工夫されています。

最近ではBIOSに変わってUEFIというものが採用されつつありますが、ユーザーインターフェースがGUIになったり、2TBよりも大きいサイズのHDDを認識できたりする以外は、今のところ変わりはないようです。

11.ボタン電池

BIOS ROMの記憶はFlashROMとRAMの2つの部分がありBIOS自体はFlashROMに記録されていますが、各種設定の部分はRAMに記録されています。FlashROMには書き換え可能な回数に限度があるのでBIOSのアップデート程度の回数ならいざ知らず、設定を変更するたびに書き換えていたら寿命が尽きてしまう可能性があるからです。

このRAMの部分は常に電力を供給しないと記憶が消えてしまうものなので、コンセントからプラグが抜かれて電力が供給されなくなった時にもBIOSの設定が消えないように、通常の電源から供給される電力とは別にボタン電池でBIOSに電力を供給しています。なお、この電池の寿命は3年程度という話なのでマザーボードを交換するくらいまでは持つようです。

ところでBIOSで間違った設定をしたために起動すら出来なくなった場合(物理的にどこかしらが破損していなければ)、BIOSの設定を消去(工場出荷時と同じ設定に戻す)すれば再び起動できる可能性が高いです。そこでボタン電池を取り外してしばらく放電を行えばBIOSが初期化されるとを知っておくといいかもしれません。 なお、大抵のマザーボードにはBIOSを初期化するためのCMOSクリアーというジャンパーがあります(やっていることは同じ)。

12.電源コネクタです。

現在ではほぼATX電源しか見かけませんが以前はAT電源もありこちらは接続を間違えるとかなりデンジャラスなことになったのですが、ATX電源は間違えて接続できないような形状になっているのでよほど無理やり指し込まなければ問題はありません。最近ではCPUの消費電力が増えたのでCPU用に別途に用意された電源線がありこのコネクタもマザーボード上に配置されています。

13.フロントパネル用のLEDやスイッチ類

フロントパネル用のLEDやスイッチ類で、位置的にフロント側にあるので右下か右にあるのが一般的です。説明書を見るかマザーボード上のシルクを確認して接続します。

基本的にスイッチ類は+-はありませんが、スピーカー端子とLEDは+-があり、LEDは間違えると点灯しません。しかしながら+-を間違えても点灯しないだけなので分からなかったら適当に試してみて逆だったら接続を逆にしてみれば済みます。

スピーカーには+-があり、間違えると音質が悪くなります。が、マザーボードに接続されたスピーカーからはBEEP音しかならないので、ピーとかブーとかに音質もひったくれもないのでどちらでもいいというのが正直なところだと思います。

チェックポイント

A.電圧生成部

電源では12V、5V、3Vの3種類の電圧を生成していますが、マザーボードではCPUを筆頭にこれら以外の電圧が必要なのでマザーボードで必要な電圧を生成しています。電子機器は電力の供給が充分じゃないと動作が不安定になったりと問題がでてきます。よって電圧生成部が充実している製品の方が動作が安定する傾向にあるのです。マザーボード選びの際には、電源生成部の品質がマザーボード自体の品質の基準の一つとなります。

B.コンデンサ

CPUの周りを中心にコンデンサが大量に配置しています。これは電源から供給する電圧は多少弱かったり強かったりするので、安定して各種回路に電力を供給するためです。

以前は、コンデンサに電解コンデンサと呼ばれる筒型の容器の中に電解液と呼ばれる液体が入っているものが使われていましたが、最近では高温や高周波数にも比較的強い固体コンデンサが多く利用されています。

もっとも、差別化のため高品質をアピールする目的で必要な箇所以外にも使われていることもあるので、必要な箇所に必要な特性のコンデンサが使われているか見極めることが大切です。

C.バッファー

高速で動作するメモリは信号のタイミングがシビアなので、ちょっとしたノイズや遅延で動作不良を起こす可能性があります。そのため、回路の最適化(配線の長さを揃えるなど)やバッファーの配置など安定動作のためのさまざまな技術が投入されており、その善し悪しで同じメモリでも安定した動作が可能かどうかが変わってくるのです。

D.シルク

マザーボード基盤上にはジャンパーやコネクタ類など多数のものが配置されていて説明書は必須となります。しかし、実は説明書がなくてもわかるような印や説明が基板上に白い文字で書かれています。これをシルクと呼びます。実はこれは説明書よりも正確で説明書にはミスプリがあったり記述がなかったりする箇所も、シルクでは正しく書かれていることも少なくありません。

バルク品など格安品には説明書がついてこない場合もありますが、シルクが読めるとそのマザーボードが利用可能なだけでなく、機能や性能もある程度予測がつきます。このシルクの親切度には差があるのでシルクの親切度も選択基準の一つとなるでしょう。

A~Dまとめ

A~Dの品質はマザーボードでは重要な箇所であるにもかかわらず数値的にも表記的にもあまり目立たないものです。つまり、これらのパーツを見る事で見えないところをケチってスペック(数値)だけ高めた製品か、本当に性能を追求した製品か、メーカーの姿勢が見えてくるのです!