『HDDのデータ消去のお話』

はじめに

最近廃棄したHDDから重要な個人データが読み出されるということが新聞や雑誌で取り上げられるようになりました。そんなの消さずに捨てた方が悪いんじゃん…と思うかもしれませんが、おそらく多くの人はデータの消去はもちろんのことフォーマットも済ませたのに…という方がほとんどだと思います。

なに!? フォーマットしたらデータは消えるのではないの?たしかに消えたように見えますが、ある程度の技術とツール(ソフト)があれば消えたハズのデータを読むことができるのです。ここではHDDのデータ管理の仕組みからHDD廃棄の方法を考えて見ましょう。

HDDのデータ管理方法

たとえば、1GBのHDDの中にちらばっている数多くのデータから目的のデータをしらみつぶしに探すようでは時間がかかってしょうがないです。そこで一般的なフォーマット形式ではFATと呼ばれるアドレスを記録した領域と実際にデータを保存してある領域に分けて大量のデータを効率よく扱えるようになっているのです。

分厚い本を考えて見ましょう。FATは目次にあたり、データ領域は実際に文が書いてある場所です。人は目次をみてどのページにどの情報がかかれているか把握してそのページを開きます。HDDも同じようにまずFATを参照して目的のデータがどこにあるかを調べて、そしてそこに書かれた位置に移動してデータを読み出します。

余談ですが、CDやCD-Rなども似たような方法をとっています。CD-Rは内周から記録していくのですが、内周部分にFATにあたる情報が記録されています。このため、CD-Rが途中で書き込みに失敗しても、ぱっとみ正しく書き込めたようにパソコンからは表示されます。目次が最後のデータまで書かれているからです。しかし、実際に書き込まれていない最後の方にあったデータにアクセスしようとしてみるとそのデータがただしく書き込まれていないことがわかるのです。

HDDの記憶と削除

HDDの記憶作業は、まずこのFATに書き込む位置をしるしてその位置にデータを記録するという方法をとっています。削除はこのFATからその情報を削除します。書き換えは削除と書き込みを行います。

問題は削除の方法で、FATからデータがあったこととデータが記録されている場所は削除されますが実際に記録されたデータそのものは残っているのです。これはいちいちデータを消していたら時間がかかってしまうためですが、このような方法をとるためたとえデータを削除しても、FATからデータの記憶場所が消えてしまっているので本来はそのデータにはアクセスできないのですが、データが記憶されている情報を片っ端から探していけば見つかるというワケです。

もちろん、削除操作をした後はそのデータの記録場所は空き容量として扱われるのでたまたまその領域に別のデータを書き込んでしまったらもう復旧はできないのですが、そのあたりはOSやHDDが適当に管理しているのでユーザーが意図的にやることではありません。

ではフォーマットはどうでしょうか?いかにもHDDをまっさらにしているような気がしますよね?でもあれはFATを新規に作りかえているだけでデータ領域はほとんど手を加えていません。よってデータはしっかり残っているのです。よって売ったり捨てたりしたあなたのHDDから悪意のある第三者がある程度の知識とツール(ソフトなど)を使ってあなたの消したはずの重要な個人情報を読み出すことは可能かもしれないのです。

(その逆に、誤って消してしまったデータを普及することも可能かもしれません。消したすぐ後に気づけばほぼ確実に戻るハズですよね。実際にそのようなことをやってくれる業者もありますがかなり費用が高いのでよっぽどのものでないかぎりもう一度作るなり探すなりした方が懸命なようです。)

ではHDDを人にあげたり捨てたりするにはどうすればいいの?

捨てるならば物理的に破壊するのが一番です。かなづちて叩いて、火であぶって…とまぁ要するにHDD自体が利用不能なら読み込むことができませんから。徹底的に木っ端微塵に破壊してもいいですが、HDDに記録された情報の重要性にもよりますが、そこまでする必要もないと思いますけど。

壊すのはもったいない…中古で売りたい…という方も多いでしょう。これでは破壊する方法は使えません。もっとも簡単な方法は空き容量になんでもいいから埋まるだけの情報を書き込むなんていうのはいいですよね。たとえば100MBくらいのBMPを作ってそれをたくさんコピーすればあっという間にギガ単位の空き容量が埋まります。さらに確実なのはHDDのデータを完全に消す機能を持った市販のソフトですが、フリーのソフトでも近い機能をもったものもあるようです。中古屋さんによってはこれらもしっかりやってくれるお店もあるようですから見てみるといいでしょう。 信頼できる友人にあげるから心配ない…と思っていても、その友人が全部使い切る前に売ったり捨てたりするとまだあなたのデータが端に残っている可能性がありますから油断は大敵です。

ちなみに、本当にHDDを熟知している技術者の場合は一度上から別の情報を書き込んでも磁気の具合から前に書かれた情報を推測することも可能だそうなので心配なら2、3回繰り返すと確実だといわれています。まぁ、そこまでして読み出すのには相手も相当大変なので適当な個人を片っ端から狙うなんてことはないでしょう。よっぽど狙われるような情報がないかぎりそこまで神経質にならなくともいいと思われますが。

いずれにせよ、HDDのデータは消えてないということを知った上で気をつけていれば危険な目にあうことも少なくなるでしょう。普段から個人情報などの重要なファイルはゴミ箱に入れた後にちゃんと消去まで行うという程度のことだけでもずいぶんちがうと思います。