Pentium M

はじめに

Pentium Mは2003年にIntelが発売したモバイル専用プロセッサーとして発売されたCPUです。

開発コードネームはBaniasでPentiumIIIをベースに分岐予測の精度を上げ二次キャッシュ容量を増やすことで低クロックでの処理能力を高めました。使用度に合わせてクロックを制御するSpeedstepも強化されて省電力と高性能を両立したプロセッサーです。

主な仕様

スペック

チップ名 Pentium M 備考
開発コードネーム Banias
一次キャッシュ 32KB
二次キャッシュ 1024KB
FSB 400MHz クロックは100MHz
クロック 0.9GHz-1.7GHz 0.9-1.0GHz 0.1GHz刻み(超低電圧版)
1.1-1.2GHz 0.1GHz刻み(低電圧版)
1.3-1.7GHz 0.1GHz刻み(通常版)
パッケージ形状 μFC-BGA/μFC-PGA
対応スロット/ソケット mPGA479M
コア電圧 1.39V-1.48V 超低電圧版及び低電圧版は異なる。
省電力機能によって変化する
プロセスルール 0.13μ
ダイサイズ ? mm2
トランジスタ数 7700万個
拡張命令 MMX/SSE2
分類 RISC
その他 拡張版Speedstep

特徴

今までIntelもAMDもモバイル向けのCPUもチップセットもデスクトップ向けのCPUに手を加えた程度のものだったのに対して最初からモバイル向けに作られたCPUなのが最大の特徴です(Pentium以前にも作ったことがあるので今回が初めてではないようだが)。

これはTransmetaが開発したモバイル専用のCPUのCrusoeが思いのほかシェアを奪ってしまったのでIntelが対抗すべく投入したもので、モバイル専用だけあって消費電力と性能のバランスがよく取れた製品となっています。

CPUはクロックが上がれば性能も上がりますが消費電力も上がってしまいますし、発熱も大きくなりモバイルパソコンでは廃熱設計などが難しくなってしまいます。この為クロックを上げることで性能をあげるというコンセプトで作られたPentium4はそもそもモバイルには向いていません。この為Pentium Mはクロックあたりの性能がPentium 4よりも優れていた一世代前のPentiumIIIをベースに作られました。Pentium IIIでボトルネックになっている点はFSBなのでFSBをPentium 4と同様のものを採用してボトルネックの解消を目指しました。

Pentium Mは単純に考えるとPentium III/Pentium Pro(コア)+Pentium 4(FSB)+(省電力機能)という製品になります。しかし、モバイル専用にするにあたってコアもだいぶ手を加えたようでPentiumIIIからはだいぶ異なるようです。

Pentium 4がモバイルに向かないことについて詳しくは『Column 01』を参照してください。

Pentium Mは、クロックが上がると消費電力が上がってしまうことを考えクロックあたりの性能をあげることに注力しました。同じクロックでの処理能力を上げるためには分岐ミスを減らす必要があります。分岐ミスは先読みを間違えることで、先読みを間違えたらもう一度計算する必要があるので当然クロックあたりの処理能力が減ってしまいます。よってPentiumMには高度な分岐予測能力が加えられました。

また、CPUに比べて圧倒的に低速なメインメモリとのアクセスが多発するとその分性能が発揮できません。そこでPentium Mではそれまでの二倍にあたる1MBの二次キャッシュを搭載しました。これによりメインメモリへのアクセスが減り性能向上が期待できます。ちなみにこれは単に高速化の技術であって特にモバイル向けというワケではありません(サーバーやワークステーション向けCPUなどでもよく使われる手法)。通常二次キャッシュを大量に内臓するとCPUが高価になってしまいまうためにあまり大量には搭載しませんが、クロックが低めのPentiumMではデスクトップの性能に近づけるために大量の二次キャッシュを搭載したのです。

Pentium III-Mではバッテリ状態などにあわせて電圧とクロックを変化させるSpeedstepという機能を搭載していました。PentiumMではこれを拡張してその時の処理状態にあわせてクロックと電圧をきめ細かに管理する拡張版Speedstepを搭載しました。