Celeron

はじめに

Celeronは1998年にPentiumIIの廉価版として発売されたローエンド向けCPUです。

開発コードネームはCovingtonで、PentiumIIをベースに二次キャッシュとパッケージケースを取り外して価格を下げたものです。

写真

写真

主な仕様

Celeron

スペック

チップ名 Celeron
開発コードネーム Covington
一次キャッシュ 32KB
二次キャッシュ なし
FSB 66MHz
クロック 266/300MHz
パッケージ形状 SEPP
対応スロット Slot1
プロセスルール 0.25μ
拡張命令 MMX
その他 -

特徴

PentiumIIはPentiumPROを低価格化すべく二次キャッシュの速度をコアの半分に下げて、パッケージをカートリッジ式に変えました。 しかしながらそれでも高価で、同等の性能を誇るAMD-K6に低価格パソコンを中心にシェアを奪われることになりました。また、PentiumIIは Slot1というそれまで使われていたSocket7とは互換性を持たなかったため、IntelとしてはSlot1への移行を促すためにも低価格な Slot1を使うCPUを投入する必要がありました。

そこで、二次キャッシュを省いてパッケージを簡略化したものをCeleronとして投入しました。これは乱暴な言い方をすれば本当に PentiumIIから二次キャッシュを省いてパッケージを粗末にしただけでコアにはほとんど変更がありません。(PentiumIIの第二世代のコアと 物理的仕様が同じになってる)

※Pentium IIについて詳しくは『PentiumII』を参照してください。

しかしながら、P6コアアーキテクチャにおける二次キャッシュの意義は絶大で(っていうかIntelがPentiumPROの発表のときに自分でいってたし)それを省いたCeleronはいかに低価格であろうと性能面があまり芳しくなく一般的には人気はイマイチでした。

Pentium II/III世代のCeleron

CeleronはPentiumシリーズの廉価版として同一ブランドで極めて多くの製品が登場しています。第一世代のCeleronの評判はイマイ チでしたが、第二世代のCeleronを皮切りに人気がいっきに上昇してCeleronはその後ローエンド向けのCPUとして確固たる地位をえることにな ります。

チップ名 Celeron
開発コードネーム Covington Mendocino Coppermine-128K Tualatin-128K
一次キャッシュ 32KB 32KB 32KB 32KB
二次キャッシュ - 128KB(コアと同速度で動く) 128KB(コアと同速度で動く) 256KB(コアと同速度で動く)
FSB 66MHz 66MHz 66/100MHz 100MHz
パッケージ形状 SEPP SEPP/PPGA FC-PGA FC-PGA2
対応スロット Slot1 Slot1/Socket370 Socket370 Socket370
プロセスルール 0.25μ 0.25μ 0.18μ 0.13μ
拡張命令 MMX MMX MMX/SSE MMX/SSE
アーキティクチャ P6 P6 P6 P6
その他 Deschutesとほぼ同一 オリジナル Coppermineと同一 Tualatinと同一

※CoppermineやTualatinは同一コアのモバイル版が存在して電圧他スペックが多少異なる。

※電圧はステッピングやクロックなどによって異なる場合もある。

※ダイサイズはスペックアップで変わることがある。

第二世代のCeleronは、P6アーキテクチャを使ったCPUでデスクトップ版では初めて二次キャッシュをコアに統合します(デスクトップ向けで は第二世代のPentiumIIIでやっと統合されたが、モバイル向けではPentiumIIの時にすでに統合されていた)。当時のPentiumIIや その次のPentiumIIIのkatmaiは二次キャッシュが別チップだった上にコアの半分の速度だったためにプログラムによってはPentiumII やPentiumIIIよりも高速に動いてしまうということもあったようです。

Celeronはオーバークロックのブームを引き起こした立役者でもあります。これはクロックアップする際に、オーバークロックさせるパーツの数は 少ない方が可能性は高くなります。これは、パーツのうち一つでもそのオーバークロックに耐えられないものがあるとオーバークロックできないためです。ここ でパッケージに統合された二次キャッシュもその例にものれず、コア自体はオーバークロックに耐えられても二次キャッシュが耐えられないとCPU自体がオー バークロックに耐えられないということになります。このため、二次キャッシュを搭載していないCovingtonやコアに統合されている Mendocinoは、PentiumII/IIIに比べて極めて高いオーバークロック耐性を示してしまい、大オーバークロックブームを引き起こします。

またFSBがPentiumII/IIIよりも低く設定されている為に、倍率固定のCeleronでもチップセット他CPU以外をオーバークロックせずにCPUのみをオーバークロックできたことも要因のひとつのようです。

CeleronはもともとDual CPUには対応していなかったのですが、Celeron自体がPentiumIIをベースに作っているのでこれらの機能には意図的にプロテクトをかけて使えないようにしていました。ところがちっとした配線を行うと簡単にDual CPUが行えることを発見されてしまいインターネットで大々的に公表されてしまいました。これで当時PentiumIIの半分くらいの価格で入手可能なCeleronを二個使ったDual Celeronいわゆるデュアロンブームが勃発します。これを教訓にIntelは次のCoppermine-128K以降ではしっかりできないようにプロテクトしてしまいました。

Coppermine-128KとTualatin-128KのCeleronは、同名コアのPentiumIIIと同等品です。

PentiumとCeleronの選別については『Column 03』を参照してください。

Pentium 4世代のCeleron

初代Celeronの目的が新しいプラットホームであるSlot1への移行を促すことだったように、今度はSocket478(Pentium4のプラットホーム)に移行を促す目的でPentium4の廉価版としてCeleronが登場します。

こちらもPentiumIIIのCeleron同様に同一コアから作られたものです。ちなみに、NorthwoodコアのPentium4では二次 キャッシュが増えた分トランジスタ数も増えてますが、Celeronでは機能が128KBに据え置かれて限定されている関係で電圧以外に性能的にはあまり 変化はありません。

チップ名 Celeron Celeron D
開発コードネーム Willamette-128K Northwood-128K Prescott-V CedarMill-V
一次キャッシュ 20KB 20KB 28KB 28KB
二次キャッシュ 128KB 128KB 256KB 512KB
FSB 100MHz(400MHz) 100MHz(400MHz) 133MHz(533MHz) 133MHz(533MHz)
対応スロット Socket478 Socket478 Socket478/LGA775 LGA775
プロセスルール 0.18μ 0.13μ 0.09μ 0.065μ
拡張命令 M/S/S2 M/S/S2 M/S/S2/S3 M/S/S2/S3
EM64T × × LGA775版のみ
アーキティクチャ NetBurst NetBurst NetBurst NetBurst
その他 Willametteと同一 Northwoodと同一 Prescottと同一 CedarMillと同一

※拡張命令:M…MMX、S…SSE、S2…SSE2、S3…SSE3

Intelのブランド戦略で、デスクトップ向けCeleronはCeleron D、モバイル向けはCeleron Mとして販売されることになりました。Celeron Dは内容的にはPentium 4世代のCeleronです。なお、Pentiumのデュアルコア版がPentium Dというブランドで販売されましたが、Celeron Dの『D』は『DESKTOP』の『D』と言われ、Pentium DのCeleronというワケではないです(Pentium Dの『D』は『DUAL』の『D』と思われる)。

Core2 Duo世代のCeleron

Intelの主力CPUがモバイル・デスクトップ共にCore2 Duoに移ってからしばらくした2007年、Core2 Duo世代のCeleronが登場しました。これまで通り同社のフラグシップモデル(今回はCore2 Duo)と同じダイを使いながら、性能面で制限を加えたものになっています。

Core2 DuoやPentium DCとの違いは今までのFSBやL2キャッシュだけでなくシングルコアである点が大きいと言えます。Celeronは価格的には大変魅力的な製品ですが、デュアルコアで低価格なPentium DCなどの方がコストパフォーマンスの点では優れているかもしれません。

チップ名 Celeron 400
開発コードネーム Conroe-L
一次キャッシュ 64KB
二次キャッシュ 512KB
FSB 200MHz(800MHz)
対応スロット LGA775
プロセスルール 0.065μ
拡張命令 M/S/S2/S3
EM64T
アーキティクチャ Core
その他 Conroeと同一

※拡張命令:M…MMX、S…SSE、S2…SSE2、S3…SSE3

Celeron M

モバイル向けのCeleronとして2004年にCeleron Mが発売されています。この頃からデスクトップ向け本流のPentium 4の発熱が大変なことになりつつあったので、スリムケースを使った小型デスクトップ向けとしてこれらモバイル向け製品を使うという流れが本格化しました。 このため、このCeleron MはこれまでのMobile Celeronとは異なり、一般のデスクトップ向けCPUと同じように流通して自作などで利用することができるようになりました。

このCeleronは、先に登場していたMobile向け専用設計のPentium Mプロセッサと同一コアから作られたものです。Pentium Mとの違いとして処理能力的な制限に加えて、Pentium Mの特徴とも言える高度な省電力機能の多くが無効になっているので、単に処理能力が劣るだけでなくノート向けとしては消費電力の面でも不利になる点には注 意が必要です。逆に省スペースデスクトップ向けなどバッテリで運用せず、処理能力もそれほど求めないのであればコストパフォーマンス的に魅力的な製品と言 えるでしょう。

チップ名 Celeron M
開発コードネーム Banias-512K Dothan-1M Yonah-1M Merom-1M
一次キャッシュ 32KB 32KB 32KB 64KB
二次キャッシュ 512KB 1024KB 1024KB 1024KB
FSB 100MHz(400MHz) 100MHz(400MHz) 133MHz(533MHz) 133MHz(533MHz)
対応スロット Socket479 Socket479 新Socket479 新Socket479
プロセスルール 0.13μ 0.09μ 0.065μ 0.065μ
拡張命令 M/S/S2 M/S/S2 M/S/S2/S3 M/S/S2/S3
EM64T × × ×
アーキティクチャ Banias Banias Core Core
その他 Baniasと同一 Dothanと同一 Yonahと同一 Meromと同一

※拡張命令:M…MMX、S…SSE、S2…SSE2、S3…SSE3

※Banias/Dothanコアを使ったCeleron MとYonah/Meromコアを使ったCeleron Mは互換性がないので、それぞれ対応したマザーボードが必要になります。