Intel 815 Chipset

はじめに

Intel 815 チップセット は2000年に発売されたi810の上位でチップセットです。開発コードネームはSolano(i815)/Solano2(i815E)で最大の特徴はPC133のメモリをサポートした点です。i815はもともとi810の上位なのでi810と機能的な差は少なくPC133をサポートした点と外部AGPをサポートした点が異なります。

これはもともとメインストリーム向けのチップセットだったi820のMTHが不良でSDRAMが利用できなかったため高価なRIMMの価格が下がるまでメインストリームでSDRAMを使うためにリリースされたものですが、結局i820が失敗したためにメインストリーム向けのチップセットとしてユーザーに受け入れられPentiumIIIを支える純正チップセットの地位を確立してしまいました。

サウスブリッジの違いからi815とi815Eの二種類が存在します。

写真

写真

主な仕様

Intel 815

Intel 815E

スペック

チップ名 Intel 815 Chipset Intel 815E Chipset
ノーズブリッジ Intel 82815 (MCH=Memory Controller Hub) Intel 82815 (MCH=Memory Controller Hub)
サウスブリッジ Intel 82801 (ICH=I/O Controller Hub Intel 82801BA (ICH2=I/O Controller Hub 2
対応CPU PentiumII/PentiumIII/Celeron PentiumII/PentiumIII/Celeron
デュアル動作 × ×
対応メモリ種類 PC133 SDRAM
(PC66 非サポート)
PC133 SDRAM
(PC66 非サポート)
対応メモリ速度 1066MB/s 1066MB/s
メモリの最大搭載量 512MByte 512MByte
最大メモリスロット数 3slot 6bank 3slot 6bank
ノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しているバス Hub Interface Hub Interface
AGP 4X 4X
内臓グラフィック Intel 752相当 Intel 752相当
PCI 32bit/33MHz×6 Ver2.2 32bit/33MHz×6 Ver2.2
IDE UltraATA66 UltraATA100
USB 2prot 2channel 4prot
付加機能 AC'97 2ch Ethernet論理層 AC'97 5.1ch

※チップセットの仕様としてはデュアルには対応してないが実際にはデュアルマザーボードも登場していた

※6bankまでのサポートなので本来なら3slotまでの対応となるが4slot持つマザーボードも存在した

※Intel 752はキャンセルになったグラフィックチップでIntel 740の後継

特徴

このチップセットの最大の特徴はPC133のSDRAMを利用できる点です。Intel はメインストリーム向けではメインメモリにRDRAMを採用する方針でした。この為当時SDRAMを利用するのはローエンド向けのi810とこのi815のみということになりました。ローエンドをカバーするi810では高速で高価な(RDRAMよかずっと安価だが)PC133のSDRAMはサポートしないため、Intelで初めてPC133に対応したチップセットとなったのです。

i815はSDRAMを搭載したIntel製のチップセットでAGP 4Xをサポートした初めてのチップセットでもあります。i810は統合型チップセットでグラフィックコアが内臓されていたために外部AGPスロットを搭載していませんでした。しかし内臓グラフィックコアは当時のの3Dグラフィックコアと比べてもお世辞にも速いとは言えず、パワーユーザーに対する魅力は少ないのが現状でした。

i815はグラフィックコアを内臓しますが、排他利用で外部AGPslotも利用できるようになっていてこれによって従来の440BXに対するデメリットはほとんど解消されました。

i815Chipsetとi440BX AGPSet との性能比較

チップ名 Intel 440BX AGPSet Intel 815E Chipset
ノーズブリッジ Intel 82440BX Intel 82815 (MCH)
サウスブリッジ Intel 82371EB (PIIX4E) Intel 82801BA (ICH2)
対応CPU PentiumII/PentiumIII/Celeron PentiumII/PentiumIII/Celeron
デュアル動作 ×
対応メモリ種類 PC100 SDRAM PC133 SDRAM
対応メモリ速度 800MB/s 1066MB/s
メモリの最大搭載量 1024MByte 512MByte
最大メモリスロット数 4slot 8bank 3slot 6bank
ノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しているバス PCI Hub Interface
AGP 2X 4X
内臓グラフィック - Intel 752相当
PCI Busmaster 32bit/33MHz×5 Ver2.1 32bit/33MHz×6 Ver2.2
IDE UltraATA33 UltraATA100
USB 2prot 2channel 4prot
付加機能 - Ethernet論理層 AC'97 5.1ch

i815内臓グラフィックはi810と同じものなので性能的に変わりません。また内臓グラフィックコアはAGP接続となっている為に、AGP protと排他利用となっていてます。パワーユーザーにとってオマケ程度の内臓グラフィックですが、このグラフィックコアの速度を遅くしているのは恐らくグラフィックコア自身というより低速なメインメモリをグラフィックメモリとして共有する点かと思われます。ただし、3Dゲーム等を行わずに通常のビジネス用途などに関しては充分な性能を出すことができるようです。

また、i810DC-100/E/E2ではディスプレイキャッシュとよばれるビデオメモリを追加できます。速度的には133MHzで4MBまでのSDRAMしかサポートしない為、PC133を利用できるi815にとってはそれほど高速になるワケではないのですが共有しない分システム全体が高速化する可能性があります。また、i810DC-100/E/E2はディスプレイキャッシュをマザーボード上に搭載しないといけなかったのに対してi815シリーズではAGPportにGPA(Graphics Performance Acceleratorと呼ばれるディスプレイキャッシュを搭載したカードを増設することで追加可能になっている点が異なります。ただし、日本市場ではこの内臓グラフィックコア自体の評価が低く、キャッシュを増設するくらいならあらたに外付けグラフィックカードを搭載する方が一般的でほとんど普及することはありませんでした。ちなみに、当然GPAと外付けグラフィックカードは排他使用です。

i815の気になる性能の点ですがFSB100のCPUとPC100のメモリを利用時には440BXの同条件よりもパフォーマンスが振るわないという結果だったようです。これはi440BXがメモリとCPUを完全に同期させる仕組みなのに対して、i815はメモリとCPUを非同期にできるようになっているためだと思われ、同期する設定にしても完全に同期するi440BXに比べて遅くなってしまうためです。i815が非同期にできる設定をもつ理由はおそらくPentiumIIIとの差別化などの理由でCeleronのFSBが66MHzだったたのに対して内臓グラフィックはメインメモリをグラフィックメモリとして使うのでメインメモリがある程度高速である必用があり、同期させるとCeleronにはPC66を使うことになり内蔵グラフィックの性能が著しく低下するためだと思われます。メモリのサポートからPC66のSDRAMを外したのも同様の理由からだと思われます。

また、FSB133とPC133のi815EとFSB100/PC100のi440BXを比べるi815の方が高速であるという結果がでているようです。高速なパーツを使っているので速くなるのは当然とも思われますが、前のFSBとメモリバスの非同期などの理由で性能差が出にくいというのが現実なようです。ただし、互換チップセットと比べるとどちらの場合も同じ条件ではi815の方が高速であるようです。これは互換チップセットが特許に触れないように複雑な構造になりがちなことに起因しているようでこれが相性問題などにもつながっているようです。これは互換チップでは避けられない宿命でしょうか?

性能面で従来の440BXに差をつけたのはこのPC133とFSB133よりむしろサウスブリッジに使われているICH/ICH2の機能の方で従来440BXのサイスブリッジのPIIX4Eとくらべてかなり強化されています。特にUltraATA100や4portのUSB、オンボードEthernetなどは確実にパワーアップしており魅力的な仕上がりとなっていたようです。

ICH/ICH2に関しては詳しくは『Intel 820 Chipset』を参考にしてください。

i815にはICHがセットになっていますが、ICH0というさらに廉価版との組み合わせも存在したようです。ただし、実際にはそのような組み合わせはあまり見られませんでした。

ICH0とICHの性能表

チップ名 ICH0 ICH
サウスブリッジ Intel 82801AB (ICH0) Intel 82801AA (ICH)
PCI 32bit/33MHz×4 Ver2.2 32bit/33MHz×6 Ver2.2
IDE UltraATA33 UltraATA66

ラインナップ

結局RDRAMの普及は失敗に終わりi820は普及しないまま開発を断念してしまいました。さらにIntelは対抗のAthlonの思わぬ攻勢に苦戦して、PentiumIIIからPentium4へ急速な転換を図ってしまいます。この為、i815の後継となるべく開発されたi830もモバイル専用に変更されてしまったためにかなり長い間i815は市場に君臨することになりました。この為i815はTualatinにも対応したタイプも登場して多くのタイプが存在しています。

チップ名 815 815E 815EP 815P 815EM 815
B-step
815E
B-step
815EP
B-step
815G 815EG
ノーズブリッジ 82815 82815 82815EP 82815EP 82815EM 82815 82815 i815EP 82815G 82815EG
ステッピング A2 - - B0 -
サウス
ブリッジ
ICH ICH2 ICH ICH2-M ICH ICH2 ICH ICH2
Tualatin
対応
× × ×
AGP Port 4X 4X 4X -
内臓グラフィック Intel 752相当 - Intel 752相当 Intel 752相当 - Intel 752相当

※サウスブリッジの違いによりサウスブリッジに搭載される機能にもそれに沿った違いがある

※ステッピングはノースブリッジのステッピング

※特に関係のないステッピングは省いた

※i815EMにはこの他にも違いが多数ありi815系では唯一FSB100/PC100のみをサポート

※i815G/EGとi810E/E2との違いはメモリにPC133が対応するか否かの点