はじめに
SIS 630はSIS 620の後継として1999年に登場したチップセットPentiumII/III/Celeron向けチップセットです。
このチップセットは、SIS 300相当のグラフィックとSIS 960相当のサウスブリッジをノースブリッジに統合したもので、最大の特徴はワンチップ構成になっている点です。
これにより設置面積が重要な小型マザーボードやコスト重視のローエンドパソコン市場での需要が高く、機能的には他のチップとそれほどかわらないのですが、最大手のIntelの当時の統合型チップセットのi810シリーズに比べて多機能で価格的にも低価格だったために統合型チップセットの需要があるローエンド市場では高い支持を得ました。
主な仕様
- ワンチップ構成。
- SIS 300相当のグラフィックコア内臓。
- ハードウェア処理による5.1chサラウンドとEthernetコントローラを内臓。
スペック
チップ名 | SIS 630 |
---|---|
ノーズブリッジ | SIS 630 |
サウスブリッジ | - |
対応CPU | PentiumII/III/Celeron |
FSB | 133MHz |
デュアル動作 | × |
対応メモリ種類 | PC133 SDRAM/VC-SDRAM |
対応メモリ速度 | 1066MB/s |
メモリの最大搭載量 | 3GByte |
最大メモリスロット数 | 3slotで6bankまで |
ノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しているバス | - |
AGP | - |
内臓グラフィック | SIS 300相当 (Mpeg再生支援あり) |
PCI | 32bit/33MHz×4 Ver2.2 |
IDE | UltraATA 66 |
USB | 2channel 5port |
付加機能 | AC'97 Audio 5.1ch(ハードウェア処理) Ethernet機能 |
特徴
このチップセットの最大の特徴はワンチップ構成になっている点です。ワンチップであることはチップ自体のコスト削減に加えて部品点数が減るわけでマザーボードとしての製造コストも下がることになります。もともと統合チップセットの市場は、オンボード機能を必用とする低価格市場なためコスト削減は非常に有効なのです。
ただし、このSIS 630は多機能をワンチップにまとめた副作用でチップのピン数が増大してしまいました。ピン数が増大すると製造が困難になってコストが上がってしまうデメリットがあります。また、ワンチップで製造するのは複数のチップに分けて製造するよりもシリコンダイの大きさが大きくなり歩留りの点でも不利ですし、サウスブリッジまたはノースブリッジ単位で機能アップさせることができないので新しいチップの開発の点でも不利になります。このような理由であまり他社はワンチップでの製造を行わないのですが、あえてワンチップ構成での提供を得意としウリにしているがSISの特徴だと思われます。
SIS 630には直前に発表されたSISの最新グラフィックスコアが内臓されています。一般に統合型チップセットには一世代前のグラフィックスコアが内臓されるのが通例だったので直前に発表された最新コアが内蔵されたSIS630はグラフィックスにおいてもそれほど不満はない性能を示したようです。SIS 300自体は128bitコアでRIVA TNT2に匹敵する演算能力をもつそうで、Mpeg再生支援機能ももっています。ビデオメモリは128bitバスをサポートしますが、SIS630ではメインメモリを共有するためメインメモリの64bit幅に狭められてしまいます。SIS 630ではADIMMという拡張スロット(AGPをさかさにしたもの)を搭載して、これにADIMMというメモリを増設することで128bitバス幅を実現する仕組みをもっています。ちなみに、このADIMMスロットにSIS301を搭載した拡張カードを搭載すると液晶DVI出力やビデオ出力及びセカンダリモニタの使用が可能となるようです。
SIS 630の機能は当時の統合型チップセットでライバルというべきi810よりも全体的に高機能でした。i810はICH2を搭載された多機能版i810E2が登場しますが、それはまだ先の話で当時はICHまたはICH0の構成でした。
チップ | SIS 630 | Intel 810E |
---|---|---|
ノーズブリッジ | SIS 630 | i810E |
サウスブリッジ | - | ICH |
対応CPU | PentiumII/III/Celeron | PentiumII/III/Celeron |
FSB | 133MHz | 133MHz |
デュアル動作 | × | × |
対応メモリ種類 | PC133/100/66 SDRAM/VC-SDRAM |
PC100 SDRAM |
対応メモリ速度 | 1066MB/s | 800MB/s |
メモリの最大搭載量 | 3GByte | 512MB |
最大メモリスロット数 | 3slotで6bank | 3slotで6bank |
ノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しているバス | - | Hub Interface 266MB/s |
AGP | - | - |
内臓グラフィック | SIS 300相当 (Mpeg再生支援あり) | i752相当 (Mpeg再生支援あり) |
PCI | 32bit/33MHz×4 Ver2.2 | 32bit/33MHz×6 Ver2.2 |
IDE | UltraATA 66 | UltraATA 66 |
USB | 2channel 5port | 1channel 2port |
付加機能 | AC'97 5.1ch(ハードウェア) Ethernet機能 |
AC'97 2ch(ソフトウェア) |
※オーディオ機能はIntelのICHがソフトウェア的にコントロールするのに対してSIS 630はハードウェア的に処理するのでCPUに負荷がかかりません。
ラインナップ
SIS 630は比較的長く販売されたこともあり機能強化版やローエンド版なども登場して幅広いラインナップを展開しました。
SIS 630のグラフィック機能強化で使われるADIMMは普及することなく結局後継のSIS 630Eで機能が削減されています。さらに機能を強化して外部AGPをサポートしたSIS630Sが登場してそれぞれTualatin対応版の登場しています。
チップ | SIS 630 | SIS 630E | SIS 630ET | SIS 630S | SIS 630ST |
---|---|---|---|---|---|
Tualatin対応 | × | × | ○ | × | ○ |
AGP | - | - | - | 4X | 4X |
IDE | UltraATA 66 | UltraATA 66 | UltraATA 100 | UltraATA 100 | UltraATA 100 |
USB | 2channel 5port | 2channel 5port | 2channel 5port | 2channel 6port | 2channel 6port |