Intel 3 Series Chipset

はじめに

Intel 3 Series チップセットは2007年に発売されたCore 2 Duo/Pentium DC/Celeron用のチップセットです。開発コードネームはBearlakeで、45μプロセスで製造される新しいCore2Duoへの対応と、FSB1333MHzやDDR3をサポートするのが特徴です(一部例外を除く)。

主な仕様

Intel 3 Series

スペック

チップ名 Intel X38 Intel G35 Intel P35 Intel G33 Intel Q35 Intel Q33 Intel G31 Intel P31
ノースブリッジ(MCH) X38 G35 P35 G33 Q35 Q33 G31 P31
サウスブリッジ(ICH) ICH9x ICH8x ICH9x ICH7x
Graphic × GMA X3500 × GMA 3100 ×
CPU Core 2 Duo
FSB 1333/1066/800 1066/800
DDR3対応 1066/800 × 1066/800 ×
DDR2対応 800/667
メモリ最大 最大8GB
メモリスロット 最大 4スロット
PCI-E x16 ○(x2)
PCI-E 2.0 ×

※サウスブリッジは対応しているICHから選択できる。

※Q35とQ33の違いは、Q35にはICH9DOがセットになっておりvPro向け機能が提供される。

ICH8とICH9/ICH9R/ICH9DHの性能表

ICH9シリーズはICH9/ICH9R及びViiv対応を加えてたICH9DHとvPro対応を加えたICH9DOとが存在します。

チップ名 ICH8/8R ICH9 ICH9R ICH9DH ICH9DO
Serial ATA 4/6 4 6port
SATA RAID ×/○ × ×
SATA AHCI ×/○ ×
Turbo Memory × × ×
PCI-Express 4/6 6
USB 2.0 5ch 8port 6ch 12port
Viiv ×/○ × ×
vPro ICH8DO ×

※ICH8DHはICH8R+Viivだったが、ICH9DHはICH9+Viivに近い(ICH9+AHCI+Viiv)。

特徴

次期Core2 Duo対応

Intel 3 Series チップセットは、45μプロセスルールで生産される次期Core 2 Duoへの対応がもっとも大きな役割です。Intel3 Series チップセットは従来よりもシリーズ間の搭載機能の差が大きいので(理由は後述)、新機能も搭載しているチップセットとそうでないチップセットがありますが、シリーズの全てのチップセットが満たしている特徴はこの点です。

DDR3メモリへの対応

X38/P35/G33チップセットでは、メインメモリに初めてDDR3メモリに対応しました。現時点ではDDR3メモリは高価で、性能差もそれほどないので採用するメリットはあまりないようです。すでに、DDR2-667のデュアルチャンネルでFSB1333とは釣り合ってしまうので、消費電力の低下やチップセット内蔵のグラフィックコアの性能向上などが期待されるところのようです。

低消費電力&低発熱のグラフィックコア

G33/Q35/Q33に実装されたGMA3100グラフィックコアは、前世代のG965/Q965チップセットのグラフィックコアに比べて大幅な消費電力と発熱の低減を果たしました。

G965はVistaでの快適な動作を目指してグラフィックコアの大幅な強化を行いましたが、それに伴って消費電力と発熱も大きくなってしまいました。この点に関して、高いグラフィック性能を必要としないオフィス用途や、発熱が致命的になる小型の筐体のパソコンなどでは不評でした。

そこで Intel 3 Series では、強力なグラフィックコアを搭載したG35と、そこそこの性能で低い消費電力と発熱を実現したG33/Q35/Q33を用意しました。

そのうちG33/Q35/Q33で採用されたグラフィックコアは、型番こそ『GMA 3100』となっており、Q965に搭載された『GMA 3000』の後継のように見えますが、実際にはさらに前世代の945Gに搭載された『GMA950』をベースに改良を加えたものです。これにより性能はQ965よりも低めですが、Vistaを普通に使う程度であれば必要十分な性能を持ち、低い消費電力と発熱を実現しました。 

なお、G35の方はG965の『GMA X3000』をベースに改良を加えたものになる予定でしたが、実際には開発に失敗してG965そのものになってしまいました(後述)。ですから、名前こそ『GMAX3500』を名乗っていますが、ハードウェア的には『GMA X3000』と同一です。なお、『GMA X3000』はDirect X9までのサポートで、『GMAX3500』はDirect X10をサポートしますが、これはドライバ側を改良することで対応するようです。

用途別に異なるダイの採用

Intelは近年、『ハイエンド向け』と『ミドルエンド向け』の2種類のチップセットをリリースしていました。ただ、ダイ(本体)自体は同じ物を使っていて、ミドルエンド向けのチップセットはその一部の機能を無効にして出荷していました。ところがIntel3 Series チップセットは『ハイエンド向け』と『ミドルエンド向け』を、それぞれに最適化した別々のダイを採用しました。

高性能なダイは、それだけ製造コストが上がりますし消費電力も高くなりがちです。機能を無効にしても製造コストが下がるわけではないので、低価格で売るミドルエンドの分はハイエンド向け製品でカバーしなければならずハイエンド向け製品が高くなってしまいます。一方、機能を無効にしても消費電力が完全に無くなるわけではないので、ミドルエンド向けの製品は無駄に消費電力が高くなるというなどの欠点もあります。

前述の965シリーズが強力なグラフィックコアを搭載したことで発熱が問題になった件では、このグラフィックコアがウリであるG965は致し方ないとしても、同じダイを使ったグラフィックコア無しのP965も消費電力が高めになってしまいました。さらに、グラフィック性能が必要ないオフィス向けのQ965にも同じダイを使っていたためにオーバースペックで発熱が大きくなってしまい、ダイを共用する弱点が露呈されてしまったのです。

ハイエンド向けとミドルエンド向けを別々に設計している Intel 3 Series チップセットは、『ハイエンド向け』のチップセットはPCI-ExpressGen2を搭載したり(X38)、Direct X10をサポートしたグラフィックコアを搭載(G35)(※)し、『ミドルエンド向け』のチップセットはDirectX9世代のグラフィックコアを搭載するかわりに低い消費電力を実現(G33/Q35/Q33)しました。

※これは当初の予定で、実際には後述の事情でG35は別のものに変更になっている。

ダイの種類(Intelが公表したわけではないので私の個人的な予想)

用途 X38 G35 ミドルエンド ローエンド G35
チップ名 X38 G35(※1) P35 G33 Q35 Q33 G31 P31 G35(※2)
Graphic - X3500 無効 3100 無効 3100(?) X3500
PCI-E 2.0 - - - -
DDR3対応 無効 - -
ICH ICH9 ICH9 ICH9 ICH7 ICH8

※1当初予定されていたG35

※2 実際にリリースされたG35

G35の謎

上の表にはG35が2箇所登場しています。実は、G35は当初予定されていたものが開発に失敗してG965のソフトウェアを手直ししてG35としたというのが通説なようです。インテル自身が公言したワケではないですが、多くの情報源からそのようなウワサが流れています。そのために、G35は下位モデルのG33ですらサポートしているDDR3やICH9をサポートしていません。

実は、同じようにスペック表を見比べるとローエンド向けのG31とP31の正体も見えてきます。これは当初から予定されていたものですが、スペック的に945シリーズとほとんど同じなのが分かります。

チップ名 Intel P31 Intel G31 Intel 945P Intel 945G
サウスブリッジ(ICH) ICH7 ICH7
Graphic × GMA 3100 × GMA 950
CPU Core 2 Duo Pentium 4/D(※)
FSB 1066/800 1066/800
DDR2対応 800/667 667/533

※公式にはCore 2 Duoはサポート外だが実際には動作するようで、独自にサポートしたマザーボードも存在する。

なお、G33/Q35/Q33に搭載されたGMA 3100グラフィックコアは前述の通り、945Gチップセットに搭載されたGMA 950をベースに作られており両者は近い存在になっています。G31のグラフィックコアはGMA3100に近いものとされていますが、実際にはGMA950をソフトウェア側で改良したものになる可能性が高いと思われます。