チップセットの歴史

はじめに

チップセットのうちIntel製チップセットの歴史について紐といてみることにします。

Pentium時代

1993年に開発コードネーム『P5』の5初代 Pentium が登場し、同時にそれ用のチップセット i430LX がリリースされます。やはり、最初の Pentium 用チップセットだけあっていろいろと不具合も多かったようで、改良版も登場しています。i430LX は『P5』の Pentium 用だったので、開発コードネーム『P54C』の第二世代の Pentium のリリースと同時に対応したチップセットi430NX が1994年にリリースされます。『P54C』 が Dual CPU をサポートするのでチップセットもデュアルに対応しています。

1995年、第三世代の Pentium 用チップセット i430FX をリリースします。このときから i440xx 系まで採用されるノースブリッジとサウスブリッジ構成が始まります。また、BusMaster IDE もサポートされます。i430LX がデュアルに対応したためにサーバーやワークステーションなどの用途にも使える仕様にしていたのに対してi430FX は一般向けに作られたもので Dual CPU に非対応やメモリの最大容量が i430NX に比べて少なくなっています。

この i430FXは、新機能の目白押しだったので安定性が非常に悪かったようでユーザーの頭を悩ませたようですが、その革新的技術が受け入れられ大ブレークしました。また、同年にモバイル専用チップセットi430MX が登場します。このチップセットは i430FX をベースにモバイル用に最適化したものですが、i430FXの目玉の一つである Bus Master IDE をサポートしませんでした。サウスブリッジとノースブリッジは PCI 接続なので汎用性が高く、メーカーの中にはi430MX のノースブリッジに i430FX のサウスブリッジを採用するなどということもあったようです。

Pentium PRO 時代

1995年の終わりに Pentium PRO が登場し、同時に Pentium PRO 用チップセット i450GX/i450KX をリリースします。前者がハイエンド向けで後者がローエンド向け(一般のローエンドではなくえハイエンドの中のローエンド?)ですが、ともに高価であまり一般人が扱うことはありませんでした。また、当時主流のOS が Windows95 で16bit コードの計算が苦手だった Pentium PRO は、Pentium に対してアドバンテージを示すことができず一般ユーザーは依然Pentium を使うことになります。

1996年には第四世代のi430HX/i430VXがリリースされます。前者がハイエンド向けで後者がローエンド向けで、 i430HX は 初めてBGA パッケージを採用して2チップ構成とし i430VX では SDRAM をサポートし両者ともに USBをサポートしました。

ただし、こちらも Windows95 が標準では USB をサポートしなかったために USB が普及せず、SDRAM も高価だったために利用されることは少なかったようです。ところで、i430VXでは初めて UMA をサポートしました。UMA=Unified Memory Architecture はメインメモリをビデオメモリと共有するという仕組みですが、当時まだメインメモリが低速だったのでビデオメモリ充分な速度が得られず利用されることはほとんどありませんでした。

同年に i450KX の後継の Pentium PRO 用のチップセット i440FX がリリースされます。これは Pentium PRO に対応しながらEDO-DRAM に対応して USB コントローラも搭載しました。i440FX は PentiumII の発売当初 PentiumII 向けに最適化されたチップセットi440LXが販売されてなかったので、i440LXが登場するまで PentiumII 用のチップセットとしても利用されました。

1997年にUltraATA33 をサポートし ACPI に対応した i430TX がリリースしました。MMX Pentium が発表されたのが1997年なので、これに対応したマザーボードにはIntel 純正チップセットならば i430TX が使われていることになります。Intel 純正チップセットで i430TX は Pentium用の最後の製品となったため長く使われることになります。また、i430TX はローエンド向けの i430VX の後継なので機能的に i430HXより劣っている点があり i430HX もハイエンドユーザーに根強い人気を見せました。

Pentium II/III 時代 - 440BXの普及

同年には初めて Pentium II に最適化されたチップセット i440LX がリリースされます。i440LX は i440FX に i430TXの技術を加えて AGP を初めてサポートしたチップセットですが、Pentium II の普及やAGP 対応のビデオカードの普及がなされるまえに後継のi440BX に世代交代してしまったためにあまり注目を浴びることなく消えてしまいました。

1998年に Pentium II の普及を促進するために同じ Slot1 プラットホームを使う低価格 CPU Celeron を登場させることとなり、あわせて差別化の為にPentiumII の FSB は 100MHz に引き上げられました。Celeron の登場と FSB 100MHz PentiumII に対応したi440BX/i440EX がリリースされます。i440BX が FSB 100MHz PentiumII 向けで i440LX のベースクロックを100MHz に上げて改良したもので、 i440EX が Celeron 向けで i440LX から Dual CPU サポートや最大メモリ搭載量の制限などをして価格を抑えたものです。

この年 i450GX の後継である i450NX もリリースされます。こちらは完全にハイエンド向けで4個まで(追加回路で8個)の SMP をサポートしPCI バスを4本持ち、2本を束ねることで 33MHz ながら 64bit PCI もサポートしました。ただし、サーバー向けなので AGP やSDRAM には対応せず、一般向けではありませんでした。

同時に 440BX 機能強化版である i440GX がリリースされますが i440BX をベースに搭載できるメモリの最大量を 倍に増やしてサーバーやワークステーション向けのPentium II Xeon に対応した製品で一般ユーザーには i440BX に対するアドバンテージが少なくそれほど広まることはなかったようです。

1999年には、i440EX の後継として i440ZX/i440ZX-66/i440DX がリリースされます。これらは i440BX をベースに廉価版にしたもので、i440ZX/i440ZX-66は i440EX よりサポートする PCI の数が1本多いのと、i440ZX は FSB 100MHz にも対応して Pentium II/IIIを使いながら廉価なパソコンを組むことが出来るようになりました。メーカーでは一定の需要があったようですが、一般向けでは上位の i440BX の方が人気がありそれほど広まることはありませんでした。i440DXはモバイル Celeron 用のローエンド向けのチップセットで AGPをサポートせず FSB も 66MHz となっていました。

また、同年もう一つの モバイル用 チップセットとして i440MX が登場します。i440MX はモバイル用に作られたチップセットでそれまでノースブリッジとサウスブリッジという二つのチップによって構成されていたチップセットを一つに集積しました。また、初めてオーディオとモデムの論理層を搭載され、これはi8xx シリーズでも採用されていくことになります。i440MXは実装面積が小さく小型モバイルパソコンの普及に伴って i440MX は爆発的な人気を誇りました。

翌年FSB 100MHz にも対応した i440MX -100 も登場し ローエンド向けます。i440MX の次に登場した i815EM はデスクトップ向けをモバイル用に改良したもので実装面積が広く、小型モバイルパソコンではi440MX が根強い人気を見せました。さらにその後継の i830 シリーズもデスクトップ向けの改良版だったために i440MX は Tualatinにも対応し 2003年近くまで現役で販売されていました。i440xx シリーズで Tualatin に対応したのはこれだけです。

Pentium III 時代 - i8xx時代

1999年Intelはi810/i820/i840をリリースします。このi810/i820/i840は同社初のハブアーキテクチャを採用した製品でそれまでのi4xx系とは全くことなり、チップセット間をPCIではなく独自バスで繋ぐハブアーキテクチャと呼ばれる構造をとりました。これはサウスブリッジに統合されるIDEコントローラにが年々高速化したため、サウスブリッジがPCI接続だとPCIバスを占有してしまうなどの問題があったためです。

もっとも最初に発売されたi810は440ZXの後継にあたりIntel初のグラフィックコアをチップセットに内臓したものでした。これは当時1000ドルPCと呼ばれた安価なパソコンにはチップセットが多くの機能を統合して安く提供する必要があった為でサウスブジッジにオーディオ機能も内蔵されていてチップセットだけでオンボードチップが不要になるようになっていました。ただしAGPポートがないので原則グラフィックカードの交換はあまり考えられていませんでしたが内臓グラフィックは性能的にはイマイチでパワーユーザーが魅力を感じる製品ではありませんでした。またサウスブリッジICHはUltraATA66に対応していました。

i820は440BXの後継でFSB133MHzをサポートしi810と同じくハブアーキテクチャを使い同じサウスブリッジを使うチップセットでメインメモリにRIMMを使いました。このチップセットはIntel初のRDRAM対応のチップセットですが、開発が難航し度重なる発売延期の末に、直前にサポートするRDRAMの本数を減らしてのリリースと発売前から黒いウワサが流れていました。さらにこのチップセットはMTHとよばれるコントローラチップを搭載することでSDRAMも利用できるように作られていましたがMTHが欠陥品でIntelはこのMTHをリコールするとともにi820の信頼は完全に失われてしまいました。多くのパワーユーザーは互換チップセットに走ったり、古きよきi440BXを延命するなどして、市場もi820ではなく互換チップセットやi440BXマザーボードを積極的にリリースしました。

i840はi820の上位でi440GXの後継にあたりi820よりもメモリコントローラの数が多くサポートするメモリの量が多いのとSlot2に対応すること、及びP64Hという追加チップで64bit/66MHzのPCIの利用が可能な点主な特徴で、i820の失敗でパワーユーザーを中心に本来一般パソコン向けではなかったハズのi840の人気上昇につながると言う皮肉な結果になりました。

1999年の終りにはi810でFSB133MHzをサポートしたi810Eも発売されます。

Intelはメインストリーム向けのi820が普及しないという頭の痛い問題があり、そのためSDRAMを使ったチップセットでi820のカバーするべきメインストリーム向けチップセットをカバーする必要がありました。そこでi810チップセットの強化版のi815/i815Eを2000年に発売します。i815はi810にPC133のSDRAMのサポートを加えAGPポートを搭載させたもので、i815Eはi815にUltraATA100とLANなどを強化した新型サウスブリッジICH2を搭載したものでした。

2000年後期にi820にICH2を搭載したi820Eが発売され2001年にはi810EにICH2を搭載したi810E2が発売されます。また、i815をモバイル向けに改良したi815EMもリリースされ基本的にはi815Eに省電力機能をサポートさせたものですがFSBもSDRAMも100MHzまでのサポートとなっていてサウスブリッジには専用のICH2Mというものが使用されていました。モバイル専用に開発されたi440MXに比べ設置面積や省電力で不利になる上に133MHzFSBやPC133SDRAMの利用ができないためi815EMはi440MXに比べて利用可能なメモリの量とIDEコントローラが強化されたくらいに過ぎず完全にi440MXを置き換えることはできませんでした。

また、2000年の後期にはi815のグラフィックコアを省略したi815P/i815EPと、AGPを省略したi815G/i815EGも登場します。Eが付く方がICH2でそうじゃないほうがICHですが、ほとんどの場合はICH2を使うEが付く方が利用されたようです。

2001年CPUバスの電気的な特性の異なるそれまでのチップセットでは利用できない新しいPentiumIII/CeleronであるTualatinが登場します。しかしこれに合わせて登場する予定だった専用のチップセットAlmadorはモバイル用に変更されてしまい、既存のi815E/EP/EGのCPUバスインターフェース部分だけを改造したB-stepと呼ばれる製品がデスクトップ向けにはリリースされることになります。

Almadorはモバイル専用となりi830としてリリースされました。i830にはグラフィックコアを内臓しAGPもサポートするi830Mとグラフィックコアを内臓しないi830MP及びAGPをサポートしないi830MGの三つの製品があり、i815EMより内臓するグラフィックコアが強化されFSB133とPC133にも対応しました。サポートするメモリの量もさらに強化されサウスブリッジはICH3-Mとよばれる新型のものを採用しました。しかしi830もi815EMと同様に設置面積や消費電力などの問題があり既存のi440MXをテュアラティンに対応させたおのとi830がテュアラティン用のモバイルチップセットとして並行して販売されることになります。

Pentium 4 時代 - RIMM時代

2000年の終りにIntelはPentium4とその対応するチップセットi850チップセットを登場させます。Pentium 4 はそれまでのPentiumとは異なるCPUバスを使うのでPentium4を利用する時i850以外の選択肢はありませんでした。

i850はi820Eと同様にICH2を使いデュアルチャンネルのRDRAMを利用して3200MB/sの広いメモリ帯域を利用できるのが最大の特徴でした。Pentium4はFSB400MHzで3200MB/sの広いCPUバスを持っているのが利点の一つで、その性能にマッチしたメモリ帯域でしたが、Pentium4は発売当初かなり高く性能はイマイチ…というウワサがながれ思うように普及しませんでした。さらに近い将来ソケットの変更があることや高価なRDRAMを使うことで一部のパワーユーザーやメーカーのハイエンドモデルなどに採用されるだけにとどまりました。

Pentium 4 時代 - DDR SDRAM時代

2001年にIntelはそれまでPentium 4=ハイエンドという方針を一転してPentium 4の大幅な値下げを敢行しました。さらにメインメモリに一般のSDRAMを利用するi845チップセットをリリースします。i845は完全にローエンドをカバーするチップセットでメモリ帯域もPentium4のCPUバスやi850のメモリバスの3200MB/sに対して1066MB/sと圧倒的に少なくCPUのパフォーマンスを生かしきれない状態でした。

その為、Intelは2001年の末にDDR SDRAMもサポートしたi845 B-stepというチップセットをリリースします。これでもなお2100MB/sとCPUバスの性能を生かしきれませんでしたが、価格差を考えると使えるレベルでPentium4の普及もあいまって急激に市場はPentium IIIからPentium 4へ移行していきました。

同年にはXeonが発売されそれに合わせてi860チップセットがリリースされました。Xeonは基本的にはマルチプロセッサーをサポートするPentium4でi860はXeonとデュアルCPUをサポートするチップセットで、i840と同様にP64Hを追加することで64bit 66MHzのPCIが利用可能です。

2002年にXeon用のチップセットとしてE7500をリリースします。このE7500はサーバー・ワークステーション向けチップセットですが、Intel初のデュアルチャンネルのPC1600DDR SDRAMを利用するのが最大の特徴でDDR SDRAMで3200MB/sの帯域を確保できる利点がありました。またサウスブリッジにはi830で使われたもののサーバー版のICH3-Sを利用しP64H2と呼ばれるチップを追加することで64bit/133MHzのPCI-Xも利用可能でした。IntelはPentium4に先だってXeonにHyper-Threadingを有効にしてリリースしました。E7500はこのHyper-ThreadingのCPUを正式にサポートするチップセットでした。

また同年にはPentium 4のコアを利用したCeleronが発売され続いてFSB533MHzのPentium 4が登場し、それに合わせてFSB533MHzに対応したi845G/i845E/i845GVをリリースします。i845GはグラフィックコアとAGPをサポートし、i845EはAGPのみ、i845GVは内臓グラフィックのみをサポートします。また、新型のICH4を搭載していてUSB2.0などをサポートします。また、i845GVをFSB400MHzのみサポートするi845GLをCeleron向けにリリースします。

同時にFSB533に対応したi850Eも登場しますがCPUバスが4200MB/sに上がったのに対してRIMMの方は発売当初は3200MB/sのサポートのままでした。

同年終りにはXeonもFSB533化され、それに合わせてE7501とE7505及びE7205が登場します。E7501はサーバー向けチップセットでE7500にFSB533MHzとPC2100 DDR SDRAMをサポートしたもので、E7505はE7501のワークステーション向けのものでAGP8Xに対応してサウスブリッジにICH4を利用します。E7205はE7505の下位モデルでPentium4向けのシングルCPUのチップセットでPCIも32bit/33MHzだけをサポートします。

またi845PEとi845GEがリリースされこちらはi845Eとi845GにそれぞれPC2700 DDR SDRAMのサポートを加えたものでHyper-Threadingにも正式に対応しました。同時にi845GEとi850Eも正式にHyper-Threadingに対応しi850Eは4200MB/sの性能をもつPC1066のRDRAMも正式にサポートされました。

Pentium 4/D 時代 - デュアルチャンネルメモリ

2003年にはFSB800のPentium 4が登場して同時にi875とi865 シリーズがリリースされます。これらは位置づけてきにはi845の後継ながら内部的にはE7205の後継となりデュアルチャンネルのPC3200 DDR SDRAMをサポートし、Serial ATAをサポートする新型のICH5及び簡易RAID機能の持ったICH5Rを搭載しました。

i865はE7205にPC3200 DDR SDRAMのサポートとICH5/ICH5R及びAGP8XとGigabit Ethernet用のCSA専用バスを加えたような構造です。i865PEはグラフィックコアなしでi865GEがグラフィックコア内臓、i865PはFSB533MHz止まりでPC2700 DDR SDRAMまでの対応となります。

i875Pはi865PにPATとよばれるメモリアクセスを高速化する機能が有効になっているもので、そのかわりにこの機能を利用するためにはFSB800とPC3200DDR SDRAMを利用する必要があります。またi875はFSB400のCPUをサポートしません。Intelはこれでメインストリーム向けのチップセットとCPUを大幅に改良しました。

2004年には、i925とi915シリーズがリリースされます。PCIに代わる次世代拡張バスのPCI Expressをサポートし、DDR2メモリにも対応しているのが特徴です。また、サウスブリッジとの接続が従来のハブインターフェース(266MB/s)からDMI(1GB/s)と呼ばれるPCI-Expressベースのものになって帯域が大幅に拡張されました。i925はi915にメモリ最適化機能等を追加する代わりに下位CPUのサポートせず、これはi875とi865の関係を踏襲しています。

2005年にIntel初のデュアルコアCPUであるPentium Dが登場し、同時にi955/i945シリーズがリリースされます。

i945は基本的にはi915の改良で、1066MHzFSBとDDR2-667の対応やグラフィックコアの強化、そしてサウスブリッジのICH7がSerialATA II(3Gbps)に対応したのがポイントです。i955はi945にメモリの最適化機能と最大8GBのメモリのサポート(i945は4GB)を追加し下位CPUをサポートしないなどi925を踏襲するような仕様でしたが、ATIのマルチグラフィックカードソリューションであるCrossFireに対応することが後日発表になり注目を集めました。さらに、2005年の後半にはCrossFireへの対応を強化したi975もリリースしています。

i945シリーズは新機能がそれほど多くない地味なアップデートでしたが、完成度が高く、またグラフィックコアが『Windows Vista』でも動作し、SerialATA IIへの対応など将来性のある基本スペックを押さえていたことから低価格CPUやATOM用のチップセットとして非常にロングセラーとなった製品です。

Core 2 Duo 時代

2006年には待望のCore 2 Duoとともにi965シリーズが投入されます。Core 2 Duoはその高い性能と低い消費電力で大人気となり一気にシェアを拡大していきました。i965も基本的にはi945の改良で、DDR2-800対応やグラフィックコアの強化、サウスブリッジに関してはIDEの廃止などがポイントになります。

また、2006年の終わりにはWindows Vistaが登場、3Dグラフィック機能をGUIに利用していたため3Dグラフィック機能がWindows利用の快適さに影響するようになりました。Intelのチップセット内蔵グラフィックコアはその目的からもそれほど高性能ではなかったため、nVidiaなどの強力なグラフィック機能を搭載した互換チップセットが躍進することになります。

2007年には45nmプロセスの新しいCore 2 Duo向けにIntel 3シリーズがリリースされました。こちらも基本的には1333MHzFSBへの対応とグラフィックコアの改良程度で大きな変化はありませんでした。なお、上位のX38ではノースブリッジ側のPCI-Express がGen2に対応しました。

2008年にはIntel 4シリーズがリリースされていますが、こちらも基本的にはグラフィックコアの改良とミドルエンドでノースブリッジ側のPCI-ExpressがGen2に対応する程度の強化にとどまりました。

Core i7 時代

2008年の終わりにハイエンド向けに新型CPUのCore i7(LGA1366版)が登場、同時にX58チップセットが投入されました。Corei7(LGA1366版)はメモリコントローラをCPUに統合し、チップセットとの接続にFSBに代わってQPIと呼ばれる新たなインターフェースを採用しました。

続いて2009年にはミドルエンドからローエンド向けにCore i7/i5/i3(LGA1156版)が登場、同時にP55/H57/H55チップセットがリリースされます。Corei7/i5/i3(LGA1156版)はメモリコントローラに加えて、グラフィックコアとグラフィックカード向けのPCI-Expressコントローラも統合し、従来のノースブリッジが提供していた機能をすべて統合してしまいました。このため、P55/H57/H55は、ほとんど従来のサウスブリッジ相当のチップとなり、1チップ構成となりました。なお、CPUとチップセットとの接続はi925/i915以来のDMIがそのまま使われています。

X58とP55/H57/H55はインターフェースが違うため全く互換性がありません。このため、Intelのプラットホームはハイエンド向けとミドルエンドからローエンド向けのプラットホームで互換性のないものとなってしまいました。

また、グラフィックコアの統合とチップセット自体が提供する機能の減少により、互換チップセットによる差別化が難しくなり、結果として互換チップセットメーカーは撤退を余儀なくされました。これに関してはCPUのインターフェースに関するライセンスが直接の原因とも言われていますが、実際のところコスト以外に差別化が難しい現状で互換チップセットの生き残る道はほとんど残されていなかったといえます。

2011年には新型のCore iシリーズが投入され、チップセットもIntel 6 シリーズが投入されました。6シリーズでは、チップセットの提供するPCI-ExpressのGen2対応(従来のサウスブリッジ側に相当)やSerialATA 3.0(6Gbps)が行われています。また、CPUとチップセット接続にDMI Gen2が採用されています。DMIは元々PCI-Expressをベースにしたもので、DMIGen2 は PCI-Express Gen2 をベースにして高速化したものです。

これはPCI-Express Gen2対応やSerial ATA 3.0(6Gbps)への対応のために従来のDMIでは帯域が足りなかったことによるものですが、逆にIntel5 シリーズと互換性がなくなってしまいました。

ところが、あろうことかその6 シリーズにSerial ATAに関するバグが発覚してリコールすることになったのです。従来のチップセットとは互換性がなく、他社の互換チップセットもないため、新型のCoreiシリーズは登場してから修正版がリリースされるまでのしばらくの間、製品はあるのに利用できるプラットホームがない状態が続くことになり、現在のチップセットが抱える弱点が路程する形となってしまいました。

チップセットはCPUに多くのものが統合されてしまった今、大幅な機能強化や新機能の搭載はあまりないのかもしれません。それでも、USB 3.0への対応やThunderboltへの対応など気になるフィーチャーは沢山あります。チップセットはCPUを支えるベースとなる部分、それは今も変わりはないのです。