『なぜi440BXはロングセラーとなったのか?』

はじめに

i440BX チップセットは、従来の i440LX にベースクロック 100MHzをサポートして小改良を行ったものです。このチップセットはがこれほどまでに大ヒットしてロングセラーとなった背景には、このチップセットが優秀だったこともさることながらいろいろな要因が重なったのも事実です。

後継チップセットの失敗

まず、440BXの繁栄を語るには後継のチップセットの失敗を外すことはできません。

440BX の後継には 440JX が予定されていました。これは 440BX のノースブリッジに PIIX6 と呼ばれる IEEE1394 をサポートしたサウスブリッジをセットにしたものでしたが、IEEE1394機器の普及の遅れが原因らしくキャンセルされてしまいました。このため、440BXはさらに後に控える開発コードネーム"Camino"と呼ばれる全く新しいチップセットが登場するまで現役となってしまいます。ところが、この"Camino"は全く新しいチップセットだったために開発が難航して度重なる延期をし、その度に440BX は延命されることになります。 しかも、"Camino"はi820として販売されるも重大なバグが発見され信頼を失います。この時発売から一年半も経っていた440BX はそれ故に信頼性は極めて高く i820とは対照的に人気が再燃します。

※なぜi820が人気がでなかったかは『Column 02』を参照してください。

さらに、その後 i820 の穴を埋めるようにリリースされた i815チップ は、上のコラムの理由でスペック的に 440BX に劣っていました。とくにハイエンド向けには完全にスペック不足だった上に、柔軟なメモリ選択を可能とするためなどの理由でFSB とメモリを非同期にしため、FSBとメモリバスを同じクロックにしても完全に同期する440BXに比べてパフォーマンスが上がらないという欠点がありました。この為i815 が登場した後も、440BX はハイエンドユーザーを中心に根強い人気を博することとなったのでした。

Celeron

もう一点は Celeron の活躍です。

Celeron はローエンド向けで、FSB が 66MHz だったので、本来ならローエンド向けに用意された 440EX/ZX チップセットを利用するハズでした。ところが、この Celeron はオーバークロック耐性が非常に高く規定値の1.5倍くらいのオーバークロックを平気でこなしてしまうことが分かったのです。

Celeron はオーバークロック対策で周波数の倍率(FSBに対するCPUの周波数の倍率)を固定されていました。 つまり、FSBを変更することでオーバークロックをしかなかったのですが、FSBを変更するとそれを基準に生成されるメモリクロックやAGP、PCIそしてそれを基準にするIDEのクロックまで変ってしまうのです。

ここで、440BX が注目されます。 Celeron は PentiumII との差別化のために FSB が 66MHz に限定されていました。440BXは FSB 100MHz を標準でサポートするため無理なく Celeron をオーバークロックできたのです。 また、デュアル Celeron通称『Duaron』が大ブームとなったときにデュアルマザーに使われていた主力チップもこの 440BX でした。440BX は Celeronとともにあったのです。

行き先が不安定だった

さらに買い換える次期がなかなか来なかったことです。

Intel 440BX は、市場に出回っていた次期が長かっただけではなく、実際にユーザーの手元で使われていた時期も長かったチップセットです。これはIntel 820 の一件以降、なかなか主力となるチップセットが登場しなかったことや、PentiumIII か Pentium4 か?、 RIMMか DDR SDRAM か?という選択まで出て将来性があやふやで簡単に乗り換える気にはなれない状態が続いたのが大きな理由です。

不満が少なかった

さらに、440BX で不満がでるということが少なかったのも理由の一つで、PentiumIII も 1.1GHz 版まで 100MHz 版が存在し、Celeronが FSB100化して安価に尚且つ高クロックまで FSB100 の CPU がそろいました。 対応するマザーボードであればマザーボードを買い換えることなくCPU だけを高クロックにすることが可能だったのです。その後、本来対応しないハズの Tualatin コアも対応した変換ゲタで440BXのマザーボードで利用できるようになったのことでさらに440BX の寿命は延命されることになります。

結局、次期主流になる メモリ と チップセットが見定められるまで、不満なく 440BX で過ごせる環境が揃っていたのが、ユーザーに長く使われた理由です。当然、440BXが非常に安定し、信頼の置けるチップセットであったからこその話ではありますが。

新しいトレンドの普及

そして、周辺機器の普及時期と重なったことです。

440BX は機能的にはそれほど従来の 440LX に比べて進歩していません。しかし既にチップセットではサポートされていた AGP や USB機器ですが OS では Windows 98 で正式にサポートされたので、実際に普及した時期は 440BX の全盛期だったのです。 この為、AGPや USB、UltraATA33 などの機能がユーザーの間に広まった時期に使われていた 440BX がとても革新的にとられるたのでした。

また SDRAM や PentiumII も価格が下がって、普及帯に降りてきたのもこの頃で、よって多くのユーザーが 440BX で初めて PentiumIIと SDRAM というアイテムを使ったのも 440BX が革新的に思われた原因だったようです。