『主な高画質化の技術』

はじめに

キャプチャーカードには高画質化のために様々な技術が盛り込まれています。これらの機能のうちソフトウェア的に処理できるものもありますが、一般的にはハードウェア的に処理します。

3次元Y/C分離 (3DYC)

白黒画面は明暗だけで表示されるので輝度情報だけで表すことができ、カラーの場合は白黒の輝度信号に加えて色信号を使って表示することになります。テレビの信号は白黒時代から始まり後にカラー化されたワケで、白黒との互換性を持たせつつカラー化するために白黒を表示する照度信号に色信号を混ぜて送るという方法が採用されました。

よって、表示させるには混合されて送られてくる信号からこの照度信号と色信号を分ける必用がありこの分離作業をY/C分離といいます。ちなみに色をXYZ色空間を表すとき輝度がY座標になることから輝度信号をY信号とよび、色信号はColorからC信号とよび両者を分離するのでY/C分離と呼ぶのです。

画面は平面ですからその画面の情報を元にY/C分離を行うならば二次元Y/C分離となり、実際に何も書かれていないならば一般的にはこの方法でY/C分離を行っています。テレビの表示品質はカラーになった後もどんどん向上して輝度も色も表現できる領域が開発当初より格段に向上し、輝度信号も色信号も情報量が多くなったため一部重なってしまった領域が出てきてしまいました。この領域の情報は輝度信号なのか色信号なのかすぐには見分けられません。

このような理由でY/C分離もより高い精度が必要になってきて開発されたのが三次元Y/C分離で、二次元に前後のコマ、つまり時間軸を加えた三次元でY/C分離を行うので三次元Y/C分離となるのです。当然二次元よりもより精度よく分離できることになります。余談ですがこの考え方からするとこの世は三次元+時間軸となり四次元となり、学者によってはこの世は三次元ではなく四次元であるという方もいるようです。

ここで、わざわざ混合しなくても別々にY信号とC信号をおくればキレイな映像が送れるのに…とは誰でも思いつくことで、これがS端子=Separate端子でこのY信号とC信号を分離(Separate)した状態で送ることから命名されました(ちなみに、黄色いコンポジット端子のCompositeは混合を意味する)。よってS端子に接続された映像にはこのY/C分離は行われません。

3次元ノイズリダクション (3DNR)

Mpegの圧縮方法は前後左右の映像との差が少ないほど情報が少なくてすみます。この為ノイズのような前後左右の画像からかけ離れた映像が入るとそこに多くのデータ量が割かれてしまいノイズ以上に全体の画質低下も招いてしまいます。

ノイズを除去するノイズリダクションはこれらのノイズを除去する機能で、Y/C分離と同様に前後のコマも含めた三次元を照らし合わせてノイズを判断する三次元ノイズリダクションはより精度の高いノイズ除去が行えるということになります。ちなみにノイズ除去処理自体はソフトウェアでも可能でそれらの機能をもったエンコードソフトも存在しています。場合によっては非リアルタイムに高精度に除去できるのでより高性能な場合もあるのですが、リアルタイムでエンコードしながらキャプチャーする場合などは上記の理由でエンコードする前にノイズを取り除く必用がありハードウェアでリアルタイムに処理する方法が一般的なようです。

音楽なども同様ですがノイズ除去というのはある意味もとの画像を補正することなので、正確に行われないと逆に画質が低下してしまうことがあります。例えば音楽ではノイズにかき消されそうな微妙なニュアンスの音がノイズリダクションによって除去されてしまい、クリアだけど繊細さにかける音楽になってしまうということもあります。よってもっとも好ましいのはノイズがのっていないソースをノイズが乗りにくい回路を持ったキャプチャーカードでノイズリダクションをかけずにキャプチャーすることになるのです。

上の3DYCとこの3DNRはその処理方法が近いので同じチップで両方の処理ができるものが多いですが、この場合3DYCと3DNRは排他利用とる場合がほとんどで製品によって両方同時に使える(別々に2つのチップを乗せているか両方同時に処理できる高性能チップをつんでいる)ものとそうでないものがあります。

ゴーストリデューサー

山に登った時ヤッホーなどとさけんでヤマビコを楽しんだりすることがありますよね?あれは声(空気の振動波)が山に反射しながら飛んで行くからです。振動波が反射するように電磁波も反射するのは鏡に自分の姿が見えることからもわかります(光は電磁波の一種)。

テレビ放送は電磁波によって家のアンテナまで届けられますが、山間部やビル街など電磁波を反射するものが多い場所では電波塔から直接送られてきた電波と山やビルにあたって反射した電波とが干渉して映像がダブって見えるような現象が起こることがあります。これをゴーストと呼び、これを除去するのがゴーストリデューサーで、ゴーストが自宅のテレビで見えるという場合にはこの機能を使うと画質が向上します。ちなみに同軸ケーブル内でも反射が起こるのでケーブルの取り回し次第では小規模ながらゴーストが発生する場合もあります。